魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
リロイが言うように、コハクがなんだか少し変わった気がするのだが…

それがなんだかわからずに、コハクの頬を両手で挟んでキスしそうな距離で赤くて綺麗な瞳を覗き込んだ。


…ラスは知らないが、こうしてコハクの瞳を真っ直ぐに覗くことができるのは、ラスだけだ。

常人ならばコハクと目が合っただけでなんでも言いなりになってしまうほどの強制的で魅力的な光が絶えずたゆたった瞳に思考能力を奪われて、人形と化す。

だがラスはけろりとしていて、瞳を覗き込んだものの結局何が変わったか解明できずにあっさりと諦めた。


「何が変わったのかわかんない。お帰りなさいコー、デス」


「…………ただいま…」


「チビ、これ。つわりが楽になるからさ。な?チビのために作ったんだぜ」


手渡された黄色い丸薬は掌でころころと転がり、視線を落としたラスは瞳を真ん丸にしてコハクの肩に顔を埋めながら驚きの声を上げた。


「え?これ…コーが作ったの?私のために?コー…お薬も作れるのっ?」


「そうさ、俺は天才だからなーんでもできるってわけよ。な?俺ってすげーだろ」


「うん、すごいすごい!いい子いい子してあげる」


ラスから頭を撫でられてテンションMAXになったコハクはラスを撫でくり回しながら、ベッドサイドの椅子に座ってブーツを脱いでいたデスを指した。


「こいつもなんか変わっただろ?なんだと思う?」


「うん、顔色が良くなった?」


――自分の時は何が変わったかわからなかったくせに、デスの変化は一発で言い当てたことに嫉妬した魔王は、ちょっと嬉しそうにはにかんだデスに枕を投げつけた。


「コー、喧嘩は駄目。でも瞳の色が前より綺麗になったかも。うん…すっごく綺麗」


「チビのためにできることがきっと増えた。これ…飲んでくれるよな?」


「うん、わかった」


水差しを手渡すと、ラスも何の躊躇もなく丸薬を口にして水を飲んだ。

…自分たちで試しているとは言え、それでも不安が残っているコハクとデスが息を詰めて見守っていると…


「あ…、今お腹がぽこぽこって言った!コー、ベビーが動いたよっ」


「マジか!触る!」


青白かった顔がみるみるピンク色になった。

ほんのり膨らんだラスの腹に伸びた手は2つ。

コハクとデスは顔を見合わせて笑うと、愛しみを込めてラスの腹に触れた。
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