魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
久々にまともにベッドから降りたラスは、萎えた脚でなんとか立ち上がるとコハクから支えてもらいながらバルコニーに出た。


グリーンリバーは1年中を通して春なので、ここに居ると季節感を感じることはできないが…今の季節、クリスタルパレスは寒くもなく暑くもなく、いい季節になっているだろう。

バルコニーの手すりから身を乗り出して虹のような光線が架かってライトアップされている大きな川を見ていると、コハクが腰に腕を回してラスが落ちないようにしながら腹を撫でた。


「数日様子を見て体調が回復したならクリスタルパレスに行こう。ドラやワン公が心配してるぜ」


「うんっ。ドラちゃんたちにずっと会ってないから会いたいな。…?コー、デス…なんか変な匂いがする…」


ラスがすんすんと鼻を鳴らしてコハクのシャツに顔を埋めると、確かに薬っぽい匂いがした。

隣でラスの頭を撫でていたデスからも同じ匂いがしたので2人を交互に見上げると、“変な匂い”と言われて過敏に反応したコハクはすぐさまデスの首根っこを掴まえてバスルームに向かって歩き出した。


「……?魔王…何を…」


「風呂!チビに“変な匂い”とか言われて泣きたい!薬の匂いが落ちるまで擦りまくってやる!」


「コー、私も一緒入る!」


「お願いします!!…じゃなかった!駄目!デスを丸洗いしてくっからチビは駄目!絶対!」


ぷうっと頬を膨らませたラスを残してデスをバスルームに連れ込み、魔法のように一瞬にしてデスの服を剥ぎ取った魔王は、上から下まで見た挙句口笛を鳴らした。


「ワーオ、お前もなかなか……駄目駄目!俺のがすげえ!」


「…?俺…ひとりで入れる…」


「駄目!お前もチビから“変な匂い”って言われてえのか?俺はさっき死にたくなる位ショックだった!」


ラスから“変な匂い”と面と向かって言われる光景を想像したデスは、ふるふると首を振ってシャワーの蛇口を全開にして頭からお湯を被った。


「……いやだ…」


「俺はチビと2人で入りたかったんだけど、お前にチビの裸はぜってぇ見せたくねえから我慢だ俺!よし、血が出るまで擦ってやる!」


わあわあとバスルームから聴こえる声にまた唇を尖らせたラスは、つわりからくる吐き気が全く来なくなったことに気付き、枕を抱きしめながらふんわり笑った。


「コー…デス…ありがと」
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