魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
水も滴るいい男――

バスルームから出て来たコハクとデスはまさしくその言葉がぴったり当てはまり、濡れた黒髪からぽたぽたと落ちる滴と上気した肌が色っぽくて、きゅんとしたラスは2人をソファーに座らせて後ろに回り込むとバスタオルで髪を拭いてやった。


「あのねコー、すごく気分が良いの。あのお薬すごいねっ」


「だろ?魔界でしか手に入んねえものばっかだったからちょっと留守にしたけど、ベルルはちゃんと見張ってたか?」


「失礼な!ちゃんとずっとラスの枕元に居ましたよ!」


小さいままラスの回りを高速で飛び回って抗議するベルルを蠅でも追い払うような仕草で手を振ったコハクは、膝を抱えてまん丸になり、ラスにいいようにされているデスを横目で羨ましげにチラ見していた。

次は自分の番だとわかっていつつも早くラスに構ってもらいたい魔王がひとつわざと下手なくしゃみをすると…


「っくしょん!」


「!コー、風邪っ?大変!早くあったかくしなきゃ…コー、こっち!私があっためてあげるっ」


「あー、なんか寒気が…」


ぞくぞくと身体をわざと震わせてみれば、それも劇的な効果を発揮し、デスにバスタオルを手渡したラスが慌てて手を引っ張ってくるとベッドの中に引きずり込まれた。


「寒いの?ふうふうしてあげる」


手に息を吹きかけ、脚を絡めて必死にあたためてくれようとするラスについ口元がにまにましてしまって仕方なくなった時――


「…俺も…協力……」


「男からあっためてもらって嬉しがる男がどこに居るんだよボケ!あっ、こら、背中に引っ付くな!」


もそもそとベッドに入ってきたデスが背中にぺったり引っ付き、その間にラスがバスタオルでコハクの髪を一生懸命拭ってやっていたのだが…

ラスとしては病気をしたり寝込んだりするコハクを見たことがないので、かなり焦ってコハクに圧し掛かりながら腕を伸ばして拭いている間、コハクの顔にはラスの胸がぽよぽよとあたっていて、大コーフン。


「やべっ、元気になった!」


「え、元気になったの?良かったー」


「ちが、そっちの元気じゃなくて」


「?意味わかんない」


きょとんとしているラスの顔にふっと笑ったのはデスで、いっそう垂れた目元が可愛らしく、やわらかい笑みを見せたデスにきゅんとしてしまった。
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