魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
それから数日間ラスは部屋から出ることを許されず、次々にリロイたちが見舞いにやって来ては慌ただしくクリスタルパレスに出発してゆくのを指をくわえて見ていた。


「いいなあ…。私もう全然平気なんだけど…駄目?」


「上目遣いで見たって駄目!可愛いんだよこんにゃろう!」


バルコニーに置かれているテーブルセットでお茶をしながら羨ましげにクリスタルパレスの方向を見つめていたラスの頭をいい子いい子したデスの腕にひしっと抱き着いたラスが本当に悔しがっているのを見たコハクは、デスの手からラスを強奪して膝に乗せるとお尻あたりまで伸びたラスの金の髪を撫でた。


「じゃあ明日行こう。脚が萎えてんだからずっと俺が抱っこすっからな」


「うんっ、わかった!コー、ありがとうっ」


久々にラスと外に出れるとあって喜んだのはコハクだけではなくデスも同じだ。

外に出る時は必ずローブを着て、ラスから貰った日傘を差してグローブを嵌めた完全装備だが、外に出れると知って喜んだラスの笑顔に口元を緩めていると、ドアをノックする音が聴こえた。


「コハク様、よろしいですか」


「ああ。どうしたオーディン」


クッキーを美味しそうに頬張っているラスの元気そうな姿に微笑した隻眼のオーディンがはコハクの足元で片膝をついて見上げると、その瞳には少しの不安が見受けられてラスが首を傾けた。



「お許しを頂きに来ました」


「あん?だからなんなんだよ」


「ローズマリーと旅に出ます。帰ってくる予定は今の所無い旅です。あの人が私に飽きない限りはずっと続く旅です」


「…お師匠と?」



――コハクの声が震えたので、クッキーを食べるラスの手も止まった。


コハクと男女の仲にあった美しき大賢者ローズマリー。

病を患ったまま不死の術に成功してしまったために永遠に治らない病を抱えたローズマリーを心配して、勘当された後も薬を一緒に暮らした家の前に置き続けたコハク――


絶句しているコハクの様子に表情を曇らせたラスが膝から降りて俯くと、その手を引っ張ったのはデスで、コハクがしたようにラスを膝に乗せて背中を擦った。


「デス…」


「………大丈夫…」


ラスの不安そうな声にはっとなったコハクはラスを見つめたが…絶句したまま二の句を告げられずにいた。
< 436 / 728 >

この作品をシェア

pagetop