魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
ラスがリロイの背中に顔を押し付けながら階段から降りて来ると、室内にも関わらず日傘を差して柄をくるくる回して階段に座っていたデスがすぐさま駆け寄ったが、ラスの様子がおかしいことに気付いて首を傾けた。


「……?」


「ラス、死神が来たよ。おんぶ代わってもらおうか?」


「…やだ…」


声は震えて、感情の機微に疎いデスでさえもラスがリロイから離れたくない気持ちが伝わった。

あまり事情はよく知らされていないのだが…どうやらこの白騎士は、ラスの元を去るらしい。


…100年後…コハクとラスの傍からは今集っている仲間たちは誰ひとりとして生きてはいないのだろうからいつか来る別れだと知っていても、離れがたいのだろう。

離れ難い気持ちは…わかる。


「相変わらず甘えん坊さんだね、ママになるんだからしっかりしなきゃ」


「…うん。リロイ…なるべく長く傍に居てね?お願い…」


「うん、考えておくよ。ほら、影が降りて来たよ」


ややおろおろしながらラスの頭を撫でていたデスの肩を叩きながらコハクが螺旋階段を降りて行き、ラスをちらりと見たが何も言わずに正面玄関のだだっ広い庭に出ると、大地に掌を翳してケルベロスとドラちゃんを召喚した。


コハクとしてもローズマリーとの過去があるのだから、リロイを繋ぎ止めたいラスの気持ちを非難できない。

時々ちらっと顔を上げて盗み見てくるラスに気付いていながらも、声をかけずに現れた黒い生き物2匹の前で欠伸をしていた。


『チビだ!チビチビチビチビ!元気?僕の背中に乗るよね?』


『俺の背中の方が乗り心地が良い。ベイビィちゃん、俺の背中に…』


「あー、うるせっ。今日は馬車にすっかなー」


ぴたりと喧嘩を止めた2匹がじっとラスに視線を注ぎ、コハクが声をかけてこないのでそれを気にしたラスはリロイの背中から降りて2匹の喉元を擦ってやると、辺りには唸り声のような“ごろごろ”が鳴り響いた。


「行きはドラちゃんで帰りはワンちゃん。これで喧嘩は無しだよね?」


2匹が尻尾をぶんぶん振って肯定すると、ラスはコハクの黒いシャツの袖を握ってくいくい引っ張った。


「コー…一緒行こ?サンドウィッチ食べるでしょ?」


「ん。俺卵サンドがいいなー」


ほっとした顔のラスの頭を撫でて抱っこしてドラちゃんの背に乗り込んだ。
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