魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
ドラちゃんが飛行する際の振動と風がラスの身体に伝わらないように魔法をかけたコハクは、しっかりとラスの腰に腕を回してあっという間にクリスタルパレスの上空に着いた。


ラスが寝込んでグリーンリバーから出られなくなってからどの位経ったか…


「わあ…っ、すごい…!コー、すごいね!」


「すげえだろ?賃金を倍にしたのと優先的な移民権を約束したらやる気出してさ、今じゃグリーンリバーの奴らよりもよく働くんだぜ」


人とは単純な生き物で、魅力的なものを目の前でチラつかせるとほいほい言うことを聴く。

さらに建設しているマンションにも優先的に住めるとあれば、頑張らないわけにはいかない。


男は労働して汗を流し、女は洗濯や料理、怪我の治療など細々とした雑事をこなし、コロニーにはもうしっかりとした自治が確立していた。


「リロイさん!リロイさんが来たぞ!」


広場にドラちゃんとケルベロスが降り立つと、リロイは男連中に囲まれ、ティアラは女連中に囲まれて早速質問攻めに遭い、ラスはそれをぽかんとした顔で見ていた。


「2人共みんなに頼られてるんだね。グラースは?オーディンさんとお師匠さんは?」


「グラースは見回りで、オーディンとお師匠は畑。チビがここに来ない間にすっげえことになってるんだぜ」


見たいものが沢山ありすぎておたおたしていると、城よりは高くないが、垂直にそびえ立つ細長いマンションを間近に見たラスは首が痛くなるほど見上げてコハクのシャツの袖を掴んで振り回した。


「すごーい!おっきーい!」


ラスのその言葉ににやつきが止まらなくなった色ぼけヘンタイ魔王は、ラスを背中から抱きしめて腰を折ると耳元でこそっと色ぼけ発言をかました。


「おっきいのはそれだけじゃないぜ。ちなみに俺のもおっき…」


「?」


「………眩しい…」


日傘を差しているにも関わらずデスがまん丸になって座り込み、ラスがしっかりグローブを嵌めたデスの手を引っ張って立たせて励まそうとすると、そこにがらがらと何かを引く音がして振り向いた。


「お、もう採れたのか。やっぱ四精霊はいい仕事するなー」


「わあ、真っ赤なトマト!真っ赤な苺!お野菜や果実が沢山!」


何もかもが新鮮だ。

何もかもが、ラスをときめかせる。
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