魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
荷台にぎっしり乗せられた野菜や果実を手に取って喜んでいるラスを抱っこしたコハクは、そびえ立つ煉瓦のマンションを見上げ、ラスに誉めてもらおうと胸を張った。


「図面から俺が引いたんだ。高層マンションって言うらしいんだけど、見たことねえだろ?一応さ、城がこの街のシンボルだから城よりも高くならねえように設計して…」


「うんうん、コーすごい。すごいって知ってたけどやっぱりすごい。何かご褒美欲しい?」


「ご褒美!?あ、あのさあ、最近全然チビと…そのー…なんだ…我慢っていうか…えーと…」


「うん、わかった」


「マジか!今での伝わったのか?ほんとに?」


赤い瞳を爛々と輝かせて喜ぶコハクの唇にちゅっとキスをしたラスは、悪魔の如き囁きをコハクの耳元で囁いた。


「優しくしてね」


「…!ままま任せろ!じゃあ俺今日ぴかぴかにするし!めっちゃ楽しみ!」


「じゃあ私もぴかぴかになる。コー、一緒にお風呂入ろ」


…まさに有頂天。

いや、有頂天を突き抜けてコハクの脚はすでに天国に1歩脚を突っ込みかけていた。


ラスは終始にこにこしていて、周囲の視線の兼ね合いもあるので必死に真面目な顔を取り繕ったコハクが次に向かったのは、クリスタルパレスから少し離れた場所にある農場と牧場だった。

牛や馬や鶏や豚といった家畜はブルーストーン王国とグリーンリバーが提供し、ライナー山脈を隔てた遠方のレッドストーン王国とゴールドストーン王国は資金援助をしている。


あと2ケ月もすれば人が住めるようになり、真夏の頃に再建が終了となる運びだが…


「あっ、お師匠さんだ。コー、声かけなくっていいの?」


「あー、うん、今日はいいんだ。でも話さなきゃなんねえことがあっから明日にでもお師匠と話すけど…いっか?」


「なんで私に聴くの?大切なお話なんでしょ?お師匠さん…旅に出ちゃうんだからちゃんとお話ししてね」


さらさらなラスの金の髪を撫でて首筋に顔を埋めさせていると、手袋とスコップを手に土いじりをしていたローズマリーが顔を上げてこちらを見た。

ラスが手を振り、手袋を外したローズマリーが柵をよじ登って近寄ってきたのだが、全身土まみれだ。


「土いじりってやっぱり楽しいわね」


「ああ、お師匠は昔っから土をいじんの好きだったもんな」


一瞬、見つめ合った。
< 444 / 728 >

この作品をシェア

pagetop