魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
「ここに来るって思ってなかったから散らかっててごめん。す、すぐ片づけるから待ってて」


絶対にラスに“だらしない”と思われたくないリロイは焦りながら真っ赤な絨毯の上に散らばった書類をかき集め、ラスをソファに座らせてようやく一息つくと立ったままいくつかの書類を見ていたコハクに目を遣った。


「で、何をしに来たんだ?」


「お手伝いー。チビにいいとこ見せとかねえとさ。半分寄越せよ、なんでこんなのに時間かかってんだよ」


「こういうのやったことないから仕方ないだろ。僕はいつも前線に居たから事務仕事は苦手なんだ」


「うん、リロイはずっと私やお父様たちの傍に居て守ってくれてたもんね。私リロイが剣握ってる姿大好き」


“大好き”と言ったラス…いや、リロイに激しく嫉妬して舌打ちした魔王は、靴を脱いでソファにころんと寝転んだラスの隣に腰かけるなり猛烈なスピードで書類に目を通すと“却下”と“許可”の箱に書類を振り分けた。

各王国からの書面が最も多く、その中にゴールドストーン王国のものがあり、久しぶりにカイの流れるようなサインを見たラスは珍しくため息をついてコハクの手を止めさせた。


「どした?」


「…これ、お父様のサイン。…お父様たち、元気かな」


「元気じゃね?心配なら連れてってやろうか?」


「ううん、今喧嘩中だからいいの。コー邪魔しちゃってごめんね、続けて」


――すると王が執務をする際に使っている重厚なテーブルを使って真剣な顔をして書類を読んでいたリロイが顔を上げてラスに笑いかけて1枚の書類をひらひらと揺らした。


「リロイ?」


「これ、よく見て。陛下からラスにメッセージが書いてあるよ」


本当は父が大好きで仕方がないのに喧嘩をして城を出て行ったラスは勢いよく起き上がると裸足のままリロイににじり寄って書類を手にして目を落とした。



「これ…」


「カイ陛下は君のことを愛しているよ。今もずっと」



何かの書類の裏側に走り書きがあった。


『私の可愛くて愛しい1人娘に“いつまでも愛している”と伝えて』


みるみる涙が込み上げたラスはすぐさまコハクの隣に座ると腕に引っ付いて顔を上げなくなってしまったので、コハクはラスの頭を撫でて肩を抱き寄せた。


離れていても、繋がっている。
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