魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
「ティアラ、一緒に戻る?私たちもうグリーンリバーに帰るけど」


「僕がティアラにちょっと用があるから先に戻ってていいよ。ドラゴンを置いて行ってもらえると嬉しいんだけど」


「うん、わかった。じゃあまた後でね」


コハクに抱っこされたラスが手を振り、リロイが振り返してドアを閉めた。

“用がある”と言われたティアラは何事かと瞳を白黒させてリロイに肩を抱かれたままソファに腰かけたが、肝心のリロイはティーカップにお湯を注いで話をする気配さえなかった。


「あの…リロイ?私に用があるのでは…」


「ああすみません、嘘です。最近あまりあなたと話をしていなかったから」


嬉しくなったティアラはちらりと上目遣いで笑いかけてきたリロイに性懲りもなくどきっとしつつ、平然な顔を装って居住まいを正した。


「私は別に忙しくないですよ。忙しいのはリロイ…あなたじゃないですか。もう選挙も近いですし…」


「その選挙なんですけど。ラスに余計なことを吹き込んだのはあなたですね?」


違う意味でどきっとして表情を強張らせたティアラの顔にはでかでかと“図星”と書いてあり、リロイはティアラの好きなローズティーをテーブルに置いて肩で息をついた。


「仕方のない人だな」


「ち、違います、ラスがどこからか聴きつけて私に尋ねて来たんです。…あの子はあなたと離れるのが嫌なんですよ」


「…あなたは離れて行くのに?」


「え?」


――ティアラの結婚式は、クリスタルパレスの復興再建が終了した後…と決まっていた。

最近はそれを話題にすることもなくなり、意図的に避けていたのだが、もう避けられない時期になりつつある。


「レッドストーン王国からティアラに関する書面が来ていました」


「私に関する…ですか?」


「ええ。…フォーン王子がグリーンリバーに向かっているそうです。王国に帰って来ないあなたに業を煮やして強行的に…とフィリア女王がお困りになっているご様子でした」


「…フォーン王子が…」


もう“王子”という歳ではない婚約者。

…いつかあの男の腕に抱かれて毎夜共に過ごさなければならないと思うと…ぞっとして死にたくなる。

だが…目の前の愛しい人を困らせたくはない。


「そうですか…。婚約者ですから私に会いに来るのは当然ですよね」


強がりを言った。
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