魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
天才というのは器用にできていて、集中している時でも他の物事に気を配ることができるらしい。

地下室はグリーンリバーの城の地下を丸ごとくり抜いて作られているのでとにかく広くて、しかも壁側には信じられないほどの量の本が並んでいる。

ただし触ってはならないものも多いとコハクから注意を受けたので、ラスはデスと2人で本を見て回ったり、鬼ごっこをしたりして遊んでいた。


「チビー、こけたら大変だし走るなよー」


「うん、わかった」


本から目を離さずに注意されて仕方なくコハクの元に戻ったラスは、久々の眼鏡姿のコハクが珍しくて、背中にのしっと上体をくっつけた。

コハクの髪は影から本体に戻った時に少し伸びていて、襟足の髪を指でいじりながらコハクの邪魔をしてみた。


「ねえコー、髪が伸びたね。切らないの?」


「んー、悪魔とかと交渉する時に髪をねだられることが多いし、何かの時のために切らないようにしてんだ。…なんだ?あれか!俺が髪切るとすっげかっこいくなるんだぜ」


「ふうん。あっ、デスがクッキー全部食べちゃった!もおっ」


…話を聴いてもらえずがっかりと思いきや、ヘンタイ色ぼけ魔王は無視されたことで逆にぞくぞくきてしまって、ラスを抱き寄せて抱っこすると、少し疲れたようなため息をついた。

そういうことも珍しいので余計に心配になったが…いつも“チビの笑顔が好き”と言ってくれるコハクのために、ラスは笑顔でコハクの手を引き寄せて腹にあてた。


「最近つわりはどうだ?楽になったか?」


「うん、かなり楽だよ。ねえ、お腹にライトをあてたらベビーが見れたりできないかな。卵みたいに」


「ぶふっ、できねえよ。生まれてくるまでの楽しみにしようぜ。あー女の子がいいなー!チビに似ためっちゃ可愛い女の子!」


エンジンがかかってきたのか俄かにコーフンしだしてきたコハクの胸にしなだれかかったラスは、デスが言いかけたことを忘れていなかった。


「さっきデスが何か言いかけたけど、なんなの?」


「へ?や、何も言いかけてねえだろ?な、デス」


コハクとデスが見つめ合った。

両者にしかわからないやりとりが瞬時に行われて、デスはコハクの分のオレンジティーをストローで飲み干しつつ、頷いた。


「………うん…」


ラスには朗らかな日常を――
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