魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
「ラス、ちょっといいか」


「あ、グラースだ。じゃあリロイたちも戻って来たのかな」


コハクが煮詰まってしまったので息抜きに地下室を出ようという話になって1階へ上がると、ずっと待っていたのか、白騎士の鎧を着たままのグラースが小さく笑いかけてきた。

ラスは出会った時からグラースが大好きで、コハクに抱っこされたままグラースの前に連れて行ってもらうと、デスは長身の身体を縮めてコハクの背中に隠れてしまった。


「あの王子が街の手紙屋に行ったという噂を聴いた。知っていたか?」


「うん、さっき本人に直接聴いたよ。やっぱり何か企んでるのかな…」


「わからない。だが一応確認してみたら、あて先はレッドストーン王国だった。…嫌な予感がする」


「コー…、どうしよう…」


ラスの表情が曇ってしまうと、コハクはラスの頬をぺろぺろと舐めて突然庭に出た。

どこへ行くのかと思いきや、ドラちゃん用のブラシを手にしたコハクは庭でまどろんでいたドラちゃんの鼻先に立つと、いきなり鼻面をごしごし擦りまくった。


『!何をする』


「ちょっとレッドストーン王国まで飛べよ。んで、ついでにゴールドストーン王国にも行ってくれ。帰って来たら礼にチビがお前をぴかぴかにしてくれるってさ」


『わかった。ベイビィちゃん、約束だよ』


「うん、わかった。でもコー…ティアラたちは一緒じゃなくっていいの?」


「一緒じゃなくっていいの。あいつらは当事者だし、俺たちはちょっとお節介しに行くだけー。チビもカイたちに会いたいだろ?喧嘩別れしたまんまでいいのか?」


「…ううん…。でも…」


コハクの首にぎゅうっと抱き着いたラスの頭をデスが撫でた。


――2人ともラスのことが心配で、笑顔が消えると何としてでも取り戻させてやりたくなる。

もちろんリロイとティアラの仲も気になるが、出産の時までは緩やかで穏やかな時間を過ごしてほしいし、煩わしい話は一切遠ざけてあげたい。


その2つをいっぺんに解決させるためには、2つの国を行き来する必要がある。


「少し大きくなった可愛いお腹を見せてやれよ。絶対喜ぶって。感動して泣くかもだぜ。あー見物!俺が見たい!」


勇気づけるとようやく決心がついたのか、頬に頬ずりしてきたラスが頷いた。


「うん、私…頑張るっ」


コハクとデスはほっとして、ドラちゃんに乗り込んだ。
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