魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
部屋に着いたリロイたちは、庭からドラちゃんの雄たけびが聴こえたので窓から外を見下ろすと、その背にコハクたちが乗っているのを確認して思わず呟いた。


「ああ、嫌な予感がする…」


「リロイ…ラスたちは何を…」


「わかりません。でもきっと僕たちを心配してくれての行動だと思いますが…いや、影の考えていることは僕には理解できない。僕を貶めようとしているのかも」


「そんなことありません。魔王はああ見えてきっと…多分…優しい人です。ラスに酸っぱくそう言われてきましたけど、やっとそう思えるようになりました」


――そんな失礼なことを言われていたこともつゆ知らずのコハクたちは、ライナー山脈を軽々と乗り越えて東のレッドストーン王国の上空を旋回していた。

もう初夏だったが上空はまだ空気が冷たく、ラスはコートやマフラーでぐるぐる巻きにされて身動きが取れない状態に。


「コー、いきなり訪問するのは失礼じゃないかな。お手紙書く?」


「そんな時間ねえよ。あの王子の手紙は明日にはフィリアの手元に届くだろうし、その前に先制攻撃しとかねえとな」


ドラちゃんの首を叩くとそれで理解したのか降下をはじめて、だんだん見えてきた城下町の人々がこちらを指して驚いている姿が見えた。

ドラゴンは神獣で、伝説上の生き物。

以前リロイたちが街に乗り付けたことがあったが、何度見ても神々しく感動するもの。


『皆美味そうだ』


「後で肉やるから食うなよ。城の正面で降りろ」


ラスはコハクの細い腰にしがみつき、そんなラスを支えるようにデスがラスの腰を支えて3人乗りしていた一行は、緋色の鎧を着た騎士団が城内からわらわらと出て来るのを確認してから庭に下り立った。


「あ、あなたは…」


「ティアラは一緒に来てないんだけど、フィリア様にお話があるの。伝えてもらってもいい?」


「畏まりました!」


ラスを知らない者は居ない。

特にここ2年間で綺麗になったが誰とも会わないらしい、という噂だけが広まっていて、当の綺麗になったラスを見た騎士団たちは一斉に膝をついてラスに見惚れていた。


「しっしっ!俺の天使ちゃんをガン見すんな!減るだろ!」


早速ラスをしっかり抱っこしたコハクは騎士団を脚で蹴散らしながら城内へと入った。
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