魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
ラスはいつも落ち着きがないので、うっかり目を離すとすぐどこかへ居なくなってしまう。

今までも度々そういうことがあって苦労をしてきたコハクは、腕から降りたがるラスをしっかり抱っこしたままフィリアの私室へとノックもせずに勝手に入った。


「相変わらず無礼な男。いらっしゃいラス王女。もう王女と呼ばない方がいいのかしら?」


「ううん、コーと結婚するまでは私は王女だから、そのままで大丈夫です」


「旦那はどうした?とうとう離婚したか?」


「彼は司祭だから教会に居るわ。…ティアラは元気にしているかしら?手紙も寄越さないからどうしているか心配だわ」


ティアラにそっくりだがもっと色気のあるフィリア王女とハグをしたラスは、たっぷりと大きな胸の感触を味わいながら顔を上げて頷いた。


「とっても元気です。でもね…あの…今日は相談をしに来たの」


「相談…?」


「あのね、ティアラの婚約者が…ちっさな王子様がティアラに会いに来たの。それでティアラが…」


まだ最後まで話していなかったにも関わらず、フィリアは全てを察したのか、表情を曇らせて赤い唇を指で撫でた。


「…そう…。彼も必死だものね。でもティアラが決めたことよ。2年前、ここへ戻って来るなり“結婚します”と言ったのはあの子の方なの」


「えっ?そう、なの…?」


話の最中にメイドが紅茶を運んできたので話を一旦中断したラスはコハクと一緒にソファに座って顔を見合わせた。


「コーは知ってた?」


「や、初耳だけど。2年前って言ったら…俺が刺された時だろ?誰でもいいから結婚して小僧のことを忘れようとしたんじゃねえかな。ようフィリア、やっぱり蛙の子は蛙だな」


「…」


以前よりもぐっとセクシーになって、コハクの言葉のひとつひとつに頭の芯が痺れそうな感覚に陥ったフィリアは胸の前で両手を三角形に組み合わせると、小さな結界を張った。


自分だけではなく、今のコハクになら誰もが言いなりになってしまうほどの言霊と、魔力。

それを平然とした顔で何の効果も受けていないラス――面白い組み合わせだ。


「…それで?これはティアラが望んだ状況だけれど…あなたたちは何をしにここまでやって来たの?」


「私…邪魔をしに来たの!」


「え?」


身を乗り出すと力をこめて言い放ったラスのストレートすぎる言葉にコハクが爆笑した。
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