魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
「ま、そりゃ違いねえけど…チビ、それはちょっとぶっちゃけすぎじゃね?」


まだ笑いが治まっていないのか肩を揺らして笑っているコハクの固い腹を結構な強さで殴ったラスは、向かい側に座っているフィリアににじり寄って隣に座ると、細い手を握った。


「ティアラはリロイのことがすっごく好きなの。それでね、リロイもティアラのことがすっごく好きなの。フィリア様…だから…その…結婚のお話は無かったことにできない?」


「…それは難しいわ。もう両国の国民にお触れを出しているし、準備も進んでいるから…。あの子がもうちょっと早く素直になってくれたら…」


ため息をついたフィリアの手をまたぎゅっと握ったラスは、身体をぴったりくっつけてなおも説得にかかっていた。

コハクは一切口を挟まずに長い脚と腕を組んでそんなラスを見ているだけ。


――ティアラの決断もわからないわけではない。

2年前に自分が刺されて、それからゴールドストーン王国まで陸路で帰らなければならない長い旅の間にもリロイはラスのことばかり考えて頭がいっぱいだったろう。

ティアラはそれをすぐ傍で見ていながらも、何もできなかったはずだ。

叶わない恋だとわかっていつつもそれを捨てきれないでいたティアラが選んだ決断は、今彼女の首をじわじわと絞めつけている。


「お願いフィリア様。ティアラに会いに来て。ティアラの話を聞いてあげて。ママとして」


「ラス王女…そういえばあなたのお腹、ふっくらしてきたわね。…そうね、母親として…今説得しておかないと、本当に私の二の舞になってしまう」


「じゃあ…フィリア様!」


「会いに行きたいけれど、私は癒しの魔法しか使えないの。グリーンリバーまでは距離がありすぎるわ」


「俺が居るじゃん。お前の予定が立ったら手紙を寄越せよ。そしたら迎えに行く」


「魔王…あなた随分丸くなったものね。やけに素直で気持ち悪いわ」


「だって俺パパになるんだもん。“ベビーちゃんとこのパパすっごくかっこよくて優しい!”って言われたいし、自慢されたいし…あぁぁあ、やっぱり絶対ベビーは誰にもやんね!」


想像だけで身悶えてしまったコハクを完全無視したラスは満面の笑みでフィリアに抱き着いた。


「ありがとうフィリア様!」


――その笑顔がカイにそっくりで、フィリアはふっと苦笑するとカイと同じ金の髪を撫でた。
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