魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
ラスたちの来訪はすぐにカイたちの耳に入り、カイとソフィーは手を繋いで螺旋階段を急ぎ足で降りると、ラスの身体の変化に不覚にも感動して泣きそうになった。


明らかに腹が少し大きくなっていて、コハクに手を引かれてその腹を愛しそうに撫でながら正面玄関から入ってきた姿は、この城を駆け回って遊んでいた小さなラスではない。


「ラス…お帰り」


「お父様…。うん…ただいま」


いつもならカイに飛びつくはずのラスはぎこちない態度でコハクを見上げ、コハクはラスの背中を抱いてやんわりと前に押し出した。

その間ソフィーはコハクを睨んでいたし、コハクはカイと見つめ合っていたし、ラスからしてみたら一触即発だ。


以前喧嘩別れしてからすぐにラスの体調が悪くなったこともあり、コハクはいつものふざけた態度をやめてラスの背中を押し続けてカイの前に連れ出すと、またラスが不安げな表情で見上げてきた。


「親子水入らずで話して来いよ」


「え…?コーはどうするの…?やだ一緒に居てっ」


「デスとはぐれたから迎えに行って来る。あいつ全然喋んねえからつい存在忘れちまうんだよなー」


「ら、ラス…お母様たちとお話をしましょう?あなたが好きなアップルティーを淹れてあげる」


「…うん。じゃあコー…すぐ戻って来てね?」


「了解」


――コハクの細い背中を未だ寂しそうに見つめているラスの肩を抱いたカイは、片膝を折って小さな手の甲にキスをすると、ラスの両脇を抱えて子供にするように頭上まで持ち上げた。


「私のプリンセス。どうしていたか心配していたよ。元気にしていたみたいで良かった。お腹も大きくなってきたね」


「…でも…私のお腹が大きくなるのがいやなんでしょ?」


「え?」


ソフィーがまるで祈るようにして胸の前で指を組み合わせているのを見たラスは、目尻にじわりと涙が浮かんできて視界が霞みながらも不安な心情を吐露した。



「だって私…魔王って呼ばれてる人の赤ちゃん生むんだもん。お父様たちはそれがいやなんでしょ?コーは昔悪いことばかりしてたの知ってるけど、今は反省してるの。でもお父様たちはコーがどれだけ変わったって受け入れないんでしょ?コーがすっごく優しい人だってこと知らないくせに」


「ラス…」



カイは胸に抱きしめたラスの髪を優しく撫でてやり、ソフィーはラスの背中を撫でて、自分たちの思いを言葉に乗せた。
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