魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
コハクの隣には真っ黒なローブに全身を包み、フードを目深に被った謎の男が居た。


だが歴戦の勇者であるカイはすぐさまその異様な雰囲気に気付くと素早く腰を上げてラスの前に立ちはだかった。


「お前は何者だ」


「…………」


「デスっ」


ラスがデスの腰に抱き着くと、コハクは一瞬いらっとした表情を浮かべたが、カイと目が合うと平静を装ってふいっと顔を逸らし、デスと呼ばれた男はかろうじて鼻から下が見える状態だったのだが、口元に笑みを掃いたのが見えた。


「デス…?まさか…死神なのか…?」


「きゃあ…っ!ら、ラス、こっちに来なさい、お母様の所に!」


「デスは怖くないよ。とっても無口だけど優しくて好き。だから喧嘩しないで」


「…………俺も…好き」


にこーっと笑って見上げてきたラスの頭をよしよしと撫でたデスのわき腹を思いきり小突いたコハクは、髪をがりがりかき上げてカイに簡単に説明をした。


「そいつは死神だけど率先して人の命を刈る奴じゃねえ。死神の書に載っている奴の命しか刈らねえんだ。放っといても全然害はねえぜ。そいつはむしろ…チビとベビーの命を助けてくれたんだ。礼を言っとけ」


「…ラスと赤ちゃんの命を…?」


カイとソフィーからまじまじ見つめられたデスはその視線に耐え切れなくなって背を向けると、中腰になって膝を抱えて丸くなってしまった。

その背中にラスがのしっと抱き着いておんぶしてもらうと、デスが廊下を走ってラスがきゃっきゃっ騒いで明るい笑い声が響いた。



「魔王…どういう意味だ?」


「…チビと腹ん中の…ベビーの命の名が死神の書に載っていたらしい。デスはルールを曲げてチビとベビーの命を助けてくれたんだ。もし死んでたら…俺はまたこの世界を壊しにかかって、今度こそお前に殺されるためにここに乗り込んだかもな」


「…で、何を勉強している?何を探してるんだ?」


「チビから聴いたのか?…まあそれは後でゆっくり話す。どうせここに泊まることになったんだろ?チビが寝付いてから話す。とりあえず盛大にもてなされてやってもいいぜ」



デスと遊んでいたラスが戻って来ると、コハクは安心しきったラスの和らいだ表情にふっと笑みを零した。


「良かったな、チビ」


「うんっ。コー、連れてきてくれてありがとう」


「お礼に後でいちゃいちゃさして!」


鼻の下を伸ばした魔王を見たカイとソフィーは肩を竦めて小さく笑った。
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