魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
デスと一緒に客間で酒を飲んでいた時、待ちかねていたカイがやって来た。


だが…その手には魔法剣が。


カイの顔は無表情で、異質な空気を纏っている魔法剣に危険を覚えたデスがいつもののんびりした動作ではなく素早く腰を浮かしてその手に真っ白な鎌を生み出した。


「…ようカイ。俺が言いてえことはもうわかってるぽいな」


「抜くつもりはない。お前の方がこの剣に用があるのではと思って持って来ただけだ」


コハクはデスのローブを引っ張って無理矢理ソファーに座らせると、それでも警戒を解かないデスは無言のまま死神の鎌をソファに立てかけて上目遣いでじっとカイを見ていた。


「チビは寝たか?あんまりはしゃぐとベビーに良くねえしあんま興奮させんなよ」


「わかっている。それより何を勉強していた?何を探している?答えは見つかったのか?」


「…見つかってねえ。だからその剣が最終手段だ」


「…自ら命を絶とうと言うのか」


――すでにカイはコハクが悩んでいることを見抜いていた。


コハクは万能だが、絶対に失敗をしない、というわけではない。

グリーンリバーで働いている改造済みの魔物たちや金色の花も、1度で成功したわけではなく苦労した末での成功例。


コハクは隠れた努力家なのだ。



「不死の魔法が失敗したら、自ら命を絶つ、か」


「…ただ単に失敗するんならまだいい。チビが人の寿命で死ぬまでずっと傍に居る。でもチビが死んだ後は…俺はその剣で死ぬつもりだ。聖石を保持する王国を回ってその剣に力を溜めて、さらに水晶の力も借りて、胸に刺す。それでジ・エンドだ」


「…ラスには秘密なのか?」


「もちろん。でも大失敗をして俺の手でチビを死なせてしまったら…お前が俺を止めてくれ。絶対だぞ、約束しろ」



デスにとってもそれは寝耳に水で、コハクの横顔をじっと見つめていた。


重たい沈黙が流れ、そういう空気が1番苦手なコハクは立ったままのカイにウォッカの瓶を投げると隣を指した。



「まあ座れ。今のは万が一、の話だ。あと不死の魔法をかけるのは結婚する日に決めてる。ベビーが生まれた後を予定してるから、もし大失敗したら…ベビーを頼む」


「…ああ、わかった。その時は今一度お前を止めるために全力を賭す」


「俺は超天才だから失敗なんかしねえけどな!お義父さん、これからお世話になりまーす!」



にかっと笑ったコハクがウィスキーを呷り、カイもそれに続いた。

デスはそんな2人を交互に見た後続き、魔法剣にじっと視線を注いだ。
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