魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
翌朝目覚めたラスは、両隣に両親が眠っているのを見て、しかもカイは腕枕をしてくれていたし、ソフィーは胸にぎゅっと抱きしめてくれていたし、とても嬉しくなってソフィーの胸に頬ずりをした。


「あら、起きたの?もうちょっと寝顔を楽しむつもりでいたのに」


「お母様っ、お母様っ」


すりすりと頬ずりをしてたっぷり甘えていると、カイからとんとんと肩を突かれて振り返り様、頬にちゅっとキスをしてもらった。


「おはようプリンセス。頭が鳥の巣になってるよ」


「あらあら大変。お母様が櫛で梳かて綺麗にしてあげる」


そう言いながら両親が頭上でキスをしたのをどきどきしながら見ていたラスは、これぞ自分の理想の夫婦像という光景を見れて脚をばたばたさせた。


「その癖も直ってないんだね。君はママになるんだからもう少し大人にならなきゃ駄目だよ」


「うん、わかった。でもね、コーが私にベビーをお世話させてくれないほどお世話すると思うから、私はお乳をあげるだけでいいのかも。コーとベビーの取り合いをするの。絶対勝たなきゃっ」


「そのことだけど、はじめてのお産で不安でしょ?お母様もあなたがお腹に居る時はとても不安だったから、お産についてお母様が教えてあげる。だからもうちょっとここに居なさいな」


「うんっ!ありがとうお母様っ」


ソフィーはラスを妊娠してからずっとつけていた日記を机の引き出しから取り出してラスに見せた。

それには事細かにその時の心情と、ラスがお腹の中で時々蹴ったりして動いたことが書かれてあり、親子川の字になったまま3人でページを読み進めて笑い合っているうちにすっかり朝になってしまった。


「やっぱり…痛いの?」


「そうよ、身体の中にもう1人居るんだから痛いに決まっているわ。でもね、不思議なことにその痛みは忘れてしまうの。あなたの顔を見た途端痛みなんか吹き飛んだわ」


「わあ、すごい…。お父様はずっと傍に居てくれてたの?」


「もちろん。お母様に陣痛が来て君が生まれてくるまでずっと傍に居たよ。君は神様からの授かりものだ。私たちの宝物だよ」


また頬にキスをしてもらって有頂天になっていると、荒々しくドアをノックする者が在った。


「チビ―!時間ですよー!そろそろ俺を構う時間ですよー!」


「あ、コーだ」


「全く…子供っぽい奴だな」


「可愛いでしょ?早く行かなきゃ暴れ出しちゃう」


――ドアの外ではいらいらしている魔王が檻に入れられた獣のように歩き回っていて、ラスはベッドから這い出るとドアを開けた。
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