魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
「ラス…これは…」
戻って来たラスからにこにこ顔で国に忘れてきたはずの日記を手渡されたティアラは、呆然として革表紙を見つめた。
日記には鍵をかけてあり、誰からも見られないようになっているので、この日記の中で吐き出した想いは…誰も知らないはずだ。
現にラスは日記を手渡した後リロイにじゃれついていたし、コハクは『おむつの替え方』という本を熟読していてからかってくる様子はない。
「これ…ありがとう。私慌てて飛び出して来てしまったから持ってくるのを忘れていたの」
「うん、良かった。じゃあ日記の続きが書けるね」
…一瞬ラスが内容を知っているのかと思ってどきっとしたが、細かいことは気にしない性格のラスは今度はデスのローブの中に潜ってすぽっと顔だけ出して遊んでいると、さすがにコハクに怒られた。
「チビ、引っ付きすぎ!」
「私もその本読みたい。あ、フィリア様はとてもお元気だったよ。今度一緒に遊びに行こうね」
「え、ええ。でもラス…一体何をしに…」
「うん、今度フィリア様がここに来るんだって。いつになるかまだわかんないけど…これでゆっくりお話ができるでしょ?ティアラに会いに来るんだよ」
「ラス…君は…君たちは何を企んで…」
「企んでなんかいねえよ。お前ら見ててまだるっこしいから背中押してやってんだろが。チビを責めるみたいな言い方やめろ。ぶっ飛ばすぞ」
まだデスのローブの中に入っていたラスはデスから頭を撫でくり回されつつ、そのまま移動を開始して手を出して顔のあたりでひらひら振った。
「じゃあ今からおむつの替え方の講義があるから行くね。リロイはティアラの傍に居てあげてね。“命令”だよ」
「ん、分かってるよ。ありがとう、ラス」
ふわっと微笑んだリロイに一瞬でもぽうっとなったラスを見逃さなかった魔王は、デスのローブを頭から剥いでラスを救出すると、ラスの胸に本を押し付けて抱っこした。
「チビさあ、ほんとは他の奴らなんか構ってる時間ねえんだからな。覚えなきゃいけねえこと沢山あるんだぞ。おむつとか抱っこの仕方とか…」
「でもコーが覚えてくれるでしょ?私も覚えるけど絶対コーの方が上手な気がするもん」
「まっ、当然。あー俺にお乳が出たらなー!」
…最高に気持ち悪い冗談を言いつつ日記に視線を落としているティアラとティアラの傍に寄り添っているリロイを横目で確認したコハクは、部屋から引きこもって出てこないというフォーンの不気味さを少し気にしていた。
「あの野郎…飛ばした鳥捕まえれば良かったな」
「うん、でもフィリア様はティアラの味方だから大丈夫だよ。きっと大丈夫」
――運命に翻弄される王女は何も自分だけではない。
ティアラにも脚を踏ん張って戦ってほしいと願いつつ、コハクの首に抱き着いて瞳を閉じた。
戻って来たラスからにこにこ顔で国に忘れてきたはずの日記を手渡されたティアラは、呆然として革表紙を見つめた。
日記には鍵をかけてあり、誰からも見られないようになっているので、この日記の中で吐き出した想いは…誰も知らないはずだ。
現にラスは日記を手渡した後リロイにじゃれついていたし、コハクは『おむつの替え方』という本を熟読していてからかってくる様子はない。
「これ…ありがとう。私慌てて飛び出して来てしまったから持ってくるのを忘れていたの」
「うん、良かった。じゃあ日記の続きが書けるね」
…一瞬ラスが内容を知っているのかと思ってどきっとしたが、細かいことは気にしない性格のラスは今度はデスのローブの中に潜ってすぽっと顔だけ出して遊んでいると、さすがにコハクに怒られた。
「チビ、引っ付きすぎ!」
「私もその本読みたい。あ、フィリア様はとてもお元気だったよ。今度一緒に遊びに行こうね」
「え、ええ。でもラス…一体何をしに…」
「うん、今度フィリア様がここに来るんだって。いつになるかまだわかんないけど…これでゆっくりお話ができるでしょ?ティアラに会いに来るんだよ」
「ラス…君は…君たちは何を企んで…」
「企んでなんかいねえよ。お前ら見ててまだるっこしいから背中押してやってんだろが。チビを責めるみたいな言い方やめろ。ぶっ飛ばすぞ」
まだデスのローブの中に入っていたラスはデスから頭を撫でくり回されつつ、そのまま移動を開始して手を出して顔のあたりでひらひら振った。
「じゃあ今からおむつの替え方の講義があるから行くね。リロイはティアラの傍に居てあげてね。“命令”だよ」
「ん、分かってるよ。ありがとう、ラス」
ふわっと微笑んだリロイに一瞬でもぽうっとなったラスを見逃さなかった魔王は、デスのローブを頭から剥いでラスを救出すると、ラスの胸に本を押し付けて抱っこした。
「チビさあ、ほんとは他の奴らなんか構ってる時間ねえんだからな。覚えなきゃいけねえこと沢山あるんだぞ。おむつとか抱っこの仕方とか…」
「でもコーが覚えてくれるでしょ?私も覚えるけど絶対コーの方が上手な気がするもん」
「まっ、当然。あー俺にお乳が出たらなー!」
…最高に気持ち悪い冗談を言いつつ日記に視線を落としているティアラとティアラの傍に寄り添っているリロイを横目で確認したコハクは、部屋から引きこもって出てこないというフォーンの不気味さを少し気にしていた。
「あの野郎…飛ばした鳥捕まえれば良かったな」
「うん、でもフィリア様はティアラの味方だから大丈夫だよ。きっと大丈夫」
――運命に翻弄される王女は何も自分だけではない。
ティアラにも脚を踏ん張って戦ってほしいと願いつつ、コハクの首に抱き着いて瞳を閉じた。