魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
見つめ合う2人――視線を逸らしたのは、フィリアの方だった。


「…私の娘と白騎士をやめたリロイのことで来たのでしょう?リロイを譲ってくれないと困るのよ、だから反対しないで」


「反対するつもりはないよ。だけど隊長を任せられる者が居なくなったというのは正直かなり痛いんだ。リロイの代わりに隊長を任せることができる者が居ないかどうかを相談しに来たんだ」


「カイ陛下…僕の我儘を…許して下さるのですか?」


カイの前で片膝を折ったリロイが苦しそうな表情で見上げると、カイは穏やかな表情で子供の時によくしたように、リロイの金色の髪をくしゃくしゃとかき混ぜた。


「愛する人が見つかったんだから、反対できるはずもない。それに…長らく私のプリンセスのことで苦しませてしまった。君はもう、全てのしがらみから解放されるべきだ」


「…陛下…!」


「ふふ、これからはレッドストーン王国の国王か、クリスタルパレスの主となるのだから、もしかしたら立場が対等になるかもしれないね。だからそんなに畏まらなくてもいいよ。クリスタルパレスが水晶に守護されているのならば、聖石を保有する王国と何ら格差はない。私から各王国にクリスタルパレスの加盟申請を出してみよう」


とんとん拍子に話が進んでいき、コハクに抱っこされていたラスは、子供のような笑顔で笑ったリロイと、傍らで腰をかがめてリロイの背中を撫でてやっているティアラの姿に脚をばたばたさせていた。


「王国の加盟ってことは…“クリスタルパレス王国”になるの?」


「ま、そういうことだろうな。でもさあ、あいつらはいいんだけどさあ、フィリアがなー」


談笑をしているカイの姿を窓際から直視ではないにしろじっと見つめているフィリア――

こんなに年月は経ったというのに、それでもフィリアの心を引き付けて止まないカイの存在感に思わず顔が綻んだコハクは、ラスの頬にキスをして膝に乗せたままソファにふんぞり返った。


「さっすがチビの父親だよな。お前らなんか変なフェロモン出してんじゃねえの?ちょっとぺろぺろさせろ!」


「きゃーっ、くすぐったいよコー!」


ラスの頬をぺろぺろして可愛い声を上げさせると、カイが肩を竦めてぞんざいな態度で手を伸ばす。


「さ、返してもらおうか。私の目があるうちはお前の思うようにはさせないからな」


「へえ、砕けた言葉遣いになってきたじゃねえか。まあいいや、今日は飲むぞー」


どんちゃん騒ぎをする気満々でいた。
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