魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
その夜、真っ白な死神の鎌を手にデスが訪れたのは、小さな女の子が眠っている部屋だった。
こほこほと弱々しい咳をする長い金髪の可愛い女の子――いつもは無慈悲に命を狩るのに、女の子の姿がラスと重なり、無表情のまま突っ立っていると、女の子が目を覚ました。
「あなたは…だあれ?」
「……俺は…死神だ…」
「じゃあ私は死んじゃうの…?病気のせいで…?」
「……うん。……これ…あげる…」
悲しそうな顔をした女の子が寝ているベッドに腰掛けてローブの中からデスが取り出したのは、ラスからもらったビスケットを包んだハンカチ。
女の子が目を丸くしたのでハンカチを開いてやると、中からビスケットが出てきて、女の子がくすっと笑った。
「死神さんってビスケットを食べるの?ふふ…可愛い」
「……ごめん」
――口を突いて出た謝罪の言葉に、デス自身も戸惑っていた。
死神の書に名が載っている者は速やかに死する日に魂を狩り、裁きにかけた後天国か地獄への旅に出ることになる。
こんな小さな女の子の命も…なんとなくラスと姿が重なるこの小さな女の子を手にかけなければならないことが本当に苦痛で、デスが黙り込むと、女の子が無言で膝の上のビスケットを1枚手にした。
「これ、ありがとう。私が死ぬのはこれを食べた後でもいい?」
「………うん。……俺も…食べる…」
深夜、灯りのついていない部屋で小さな女の子と2人でビスケットをかじり、食べ終わった時――女の子が机に手を伸ばして引出しからレターセットを取り出し、たどたどしい字で何かを書いていた。
デスがそれを覗き込むと…それは、両親への別れの言葉だった。
『今まで愛してくれてありがとう。さようなら』
…ふいに胸が熱くなったデスは、それでも使命を全うするために腰を上げると、女の子の頭を骨の手で優しく撫でた。
「……強い子…」
「私…生まれた時から心臓が弱かったの。だから長く生きれないって言われてたから…。死神さん…手を繋いでて。独りじゃ怖いから…」
「………うん…」
死神の鎌は人の身体を傷つけずに魂だけを刈り取るが、女の子はそれでも怖がり、きゅっと瞳を閉じる。
デスは息を整え、静かな気持ちで真っ白な鎌を振り下ろし、女の子の細くて小さな魂を刈り取った。
そしてベッドの傍らで膝を折り、骨の手で女の子の小さな手をずっと握りしめていた。
冷たくなるまでずっとずっと、握りしめていた。
こほこほと弱々しい咳をする長い金髪の可愛い女の子――いつもは無慈悲に命を狩るのに、女の子の姿がラスと重なり、無表情のまま突っ立っていると、女の子が目を覚ました。
「あなたは…だあれ?」
「……俺は…死神だ…」
「じゃあ私は死んじゃうの…?病気のせいで…?」
「……うん。……これ…あげる…」
悲しそうな顔をした女の子が寝ているベッドに腰掛けてローブの中からデスが取り出したのは、ラスからもらったビスケットを包んだハンカチ。
女の子が目を丸くしたのでハンカチを開いてやると、中からビスケットが出てきて、女の子がくすっと笑った。
「死神さんってビスケットを食べるの?ふふ…可愛い」
「……ごめん」
――口を突いて出た謝罪の言葉に、デス自身も戸惑っていた。
死神の書に名が載っている者は速やかに死する日に魂を狩り、裁きにかけた後天国か地獄への旅に出ることになる。
こんな小さな女の子の命も…なんとなくラスと姿が重なるこの小さな女の子を手にかけなければならないことが本当に苦痛で、デスが黙り込むと、女の子が無言で膝の上のビスケットを1枚手にした。
「これ、ありがとう。私が死ぬのはこれを食べた後でもいい?」
「………うん。……俺も…食べる…」
深夜、灯りのついていない部屋で小さな女の子と2人でビスケットをかじり、食べ終わった時――女の子が机に手を伸ばして引出しからレターセットを取り出し、たどたどしい字で何かを書いていた。
デスがそれを覗き込むと…それは、両親への別れの言葉だった。
『今まで愛してくれてありがとう。さようなら』
…ふいに胸が熱くなったデスは、それでも使命を全うするために腰を上げると、女の子の頭を骨の手で優しく撫でた。
「……強い子…」
「私…生まれた時から心臓が弱かったの。だから長く生きれないって言われてたから…。死神さん…手を繋いでて。独りじゃ怖いから…」
「………うん…」
死神の鎌は人の身体を傷つけずに魂だけを刈り取るが、女の子はそれでも怖がり、きゅっと瞳を閉じる。
デスは息を整え、静かな気持ちで真っ白な鎌を振り下ろし、女の子の細くて小さな魂を刈り取った。
そしてベッドの傍らで膝を折り、骨の手で女の子の小さな手をずっと握りしめていた。
冷たくなるまでずっとずっと、握りしめていた。