魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
暗がりの中、壁に寄りかかっているカイの金色の髪と青い瞳だけがよく映えて、出会った時のことを思い出したフィリアは、カイと同じように動かずに息をついた。
「…私が何度もあなたに愛の告白をしたこと…覚えてる?」
「ああ、覚えているとも。随分とはぐらかしてきたが…お前はやめようとしなかった。俺はいつかオーフェンに刺されるんじゃないかと冷や冷やしてたよ」
「…いつからソフィーを愛していたの?私と出会った時は…すでに恋仲だったの?」
「いや、魔王を倒すために旅に出る覚悟をした時、当時の国王陛下…つまりソフィーの父上から魔法剣を賜った。その時にソフィーが傍に居たんだ。俺の一目惚れというわけだよ」
シリアスにならないように少し茶化した話し方で雰囲気を和ませたカイは、ようやく身体を起こしてフィリアの前に座り、長い脚を組んで背もたれに身体を預けた。
「そう…。じゃあ…魔王を倒した後国に戻ってすぐにソフィーに告白したというわけね?」
「魔王を倒した俺は勇者扱いされた。陛下がソフィーと結婚して国を譲る、と言い出したんだ。最初は驚いたが…それがソフィーの願いでもあると聴いて嬉しかったものだよ。ただの傭兵が国と美しい女性を手に入れたのだから、断るはずもない」
「ふふ、そうね…。でもあなたの傭兵としての腕っぷしは私の国にも轟いていたわよ。あなたの浮名も聞いたことがあるわ」
「おや、それはソフィーには秘密にしてもらおうか。女性と浮名を流したのはソフィーと出会う前の話だからね。お前がオーフェンと結婚したと聴いて最初は驚いたが、あんなにお可愛らしい娘が生まれて幸せになったんじゃないのか?」
…幸せになったかもしれないが、今でも心にはぽっかりと穴が空いたまま。
旅を通じてどんどんカイにのめり込んでいった気持ちは今でも忘れていないし、あの頃とほとんど変わらないカイを目の前にしてときめきを覚えていたフィリアは、意を決してカイの隣に移動すると、恐る恐る膝に触れた。
「…フィリア」
「けじめをつけたいの。…別にキスをして、って言ってるわけじゃないんだから、いいでしょう?」
――カイは、膝の上に置かれたフィリアの手をやわらかく握りしめた。
一瞬その手はびくっと引き攣り、ゆっくり顔を上げたフィリアの黒瞳は潤んでいたが、カイは優しい微笑みを浮かべたまま、肩を竦めた。
「ソフィー以外の女性と手を繋いだなんてソフィーに知られたらものすごく怒られてしまう。これは秘密だからね」
「秘密…ええ…わかったわ。カイ…あなたいい男だったわ。でも私をふるなんて馬鹿な男よ」
「そうかもしれないね。君を第2王妃に、という手もあったことをすっかり忘れていたよ」
「!な…、からかわないで!」
場が和み、フィリアにぽかぽか肩を叩かれたカイは、頬を緩めてその攻撃を甘んじて受けた。
「…私が何度もあなたに愛の告白をしたこと…覚えてる?」
「ああ、覚えているとも。随分とはぐらかしてきたが…お前はやめようとしなかった。俺はいつかオーフェンに刺されるんじゃないかと冷や冷やしてたよ」
「…いつからソフィーを愛していたの?私と出会った時は…すでに恋仲だったの?」
「いや、魔王を倒すために旅に出る覚悟をした時、当時の国王陛下…つまりソフィーの父上から魔法剣を賜った。その時にソフィーが傍に居たんだ。俺の一目惚れというわけだよ」
シリアスにならないように少し茶化した話し方で雰囲気を和ませたカイは、ようやく身体を起こしてフィリアの前に座り、長い脚を組んで背もたれに身体を預けた。
「そう…。じゃあ…魔王を倒した後国に戻ってすぐにソフィーに告白したというわけね?」
「魔王を倒した俺は勇者扱いされた。陛下がソフィーと結婚して国を譲る、と言い出したんだ。最初は驚いたが…それがソフィーの願いでもあると聴いて嬉しかったものだよ。ただの傭兵が国と美しい女性を手に入れたのだから、断るはずもない」
「ふふ、そうね…。でもあなたの傭兵としての腕っぷしは私の国にも轟いていたわよ。あなたの浮名も聞いたことがあるわ」
「おや、それはソフィーには秘密にしてもらおうか。女性と浮名を流したのはソフィーと出会う前の話だからね。お前がオーフェンと結婚したと聴いて最初は驚いたが、あんなにお可愛らしい娘が生まれて幸せになったんじゃないのか?」
…幸せになったかもしれないが、今でも心にはぽっかりと穴が空いたまま。
旅を通じてどんどんカイにのめり込んでいった気持ちは今でも忘れていないし、あの頃とほとんど変わらないカイを目の前にしてときめきを覚えていたフィリアは、意を決してカイの隣に移動すると、恐る恐る膝に触れた。
「…フィリア」
「けじめをつけたいの。…別にキスをして、って言ってるわけじゃないんだから、いいでしょう?」
――カイは、膝の上に置かれたフィリアの手をやわらかく握りしめた。
一瞬その手はびくっと引き攣り、ゆっくり顔を上げたフィリアの黒瞳は潤んでいたが、カイは優しい微笑みを浮かべたまま、肩を竦めた。
「ソフィー以外の女性と手を繋いだなんてソフィーに知られたらものすごく怒られてしまう。これは秘密だからね」
「秘密…ええ…わかったわ。カイ…あなたいい男だったわ。でも私をふるなんて馬鹿な男よ」
「そうかもしれないね。君を第2王妃に、という手もあったことをすっかり忘れていたよ」
「!な…、からかわないで!」
場が和み、フィリアにぽかぽか肩を叩かれたカイは、頬を緩めてその攻撃を甘んじて受けた。