魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
決選投票は即日開票となり、広場ではまたもや人々がすし詰め状態に集まり、結果を待ち受けていた。

リロイが前日に立候補したため、やむなく立候補していた医師など街の礎に携わる人々は辞退することができなかったが…結果はもうわかっている。

なので街に住む皆が満面の笑みだったが、ひとり緊張した面持ちで空中庭園から人々の波を見ていたリロイは、カイから肩を叩かれて我に返った。


「少し落ち着きなさい。しかしすごいね、君の立候補を待っていたんだって?フィリア、王国を継いでもらうのは諦めた方がいいかもしれないね」


「それはそれで困るんだけれど…でも民意ならば仕方ないものね。ティアラ…あなたたちが作った街だもの。ここに住むのが1番いいわ」


「感動的なところすみませんけどー!ここを作ったのは俺!俺とチビ!カイに結婚許してもらうために仕方なく再興したんだからな。そこんとこ忘れるなよ」


ラスを真ん中に座らせてデスと撫で回していたコハクがむっとした表情で抗議すると、ラスが何度も頷いて賛同する。

リロイやティアラやグラースは、あくまでコハクに協力した立場だが――この男が表舞台に立つのを強固に拒むため、仕方なく矢面に立った状態だったのだ。

実質的に決定権はすべてコハクにあり、リロイもそれに従ってきたが、後半はほぼ全権を与えられた状態で、右往左往しながら作った街。


「…本来なら、お前が治めるべき街だと思うんだけど…僕には荷が重い」


「はあ?俺はグリーンリバーの統治もしなきゃなんねえし…お前なあ、王国を継ぐ方がよっぽど荷が重いっつーの。とにかく俺は関わんねーから。お前が当選したら、お前に治めてもらうからな。はいこの話終了ー」


勝手に話を切り上げられてリロイが困った顔をしていると、階段を駆け上がって来る音がしたと思ったら、今はもう街に住んでいるエリノアとレイラが飛び込んできた。



「エリノア!レイラ!久しぶりっ」


「ラス!わあ…お腹が大きくなったわね…。ああその話は後にして、開票結果が出ました!リロイさん…あなたがリーダーに選ばれました!」


「ぼ、僕が…?そんな…カイ陛下…どうすれば…」


「行ってきなさい。民意というものがどれほど大切で大きな力か、その目で耳で見てくるといい」



リロイの肩を優しく抱いたカイの背中に抱き着いたラスが嬉しそうに顔を上げて大きな瞳を輝かせる。


「リロイ、行こ!おめでとう、リロイ!」


「ラス…ありがとう」


皆に囲まれたリロイは、少し照れくさそうにしてはにかんだ。
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