魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
隣にコハクが寝ているのが未だに不思議だ。

2年前旅をしている間は、起きるといつもコハクはどこかに行って居なくなっていた。

どこに居るのか必死に捜して、コハクを捜し回っていた日々を思い出したラスは、うつ伏せに寝ているコハクの真っ黒くて長い睫毛をじっと見つめた後、背中に乗ってみた。


「んんー…チビ…何してんだあ?」


「お腹空いちゃった。私がパンケーキ作ってあげよっか。パンケーキ食べたいでしょ?蜂蜜をたっぷりかけたパンケーキ!」


パンケーキを連発してコハクを馬にしてゆさゆさ揺さぶっていると、コハクはがりがりと髪をかきながらくるりと寝返りを打ち、今度はラスが腹の上に乗った。


「チビがパンケーキ食べたいんだろ?この後忙しくなっから昼食いっぱぐれる可能性もあるし…俺が作ってやるからたらふく食っとけよ」


「うん、わかった。じゃあ私は邪魔にならないように花冠とブーケを作る練習してるね」


床に散らばった服をベッドの上に乗せてキャビネットから真っ黒な服一式を取り出して着たコハクは、ラスを抱っこして部屋を出た。

螺旋階段を降りている間にふんわりと甘い匂いが鼻をくすぐり、コハクとラスが顔を覗き込みながらキッチンを覗き込むと、フライパンを手にしたデスが振り返った。


「デス!?もしかして…お料理作ってるの?」


「………うん。……ラスの好きな…パンケーキ…」


テーブルには料理の本がごちゃごちゃと乱雑に置いてあり、焦げたパンケーキが何層にも山積みになっているのを見たラスが吹き出し、ころころと笑った。

きっと自分のために作ってくれたのだというデスの気持ちが伝わり、コハクから降ろしてもらうと、隣に立って腕に抱き着いた。


「ありがとう。じゃあ私とコーは生クリーム作るね。デス、美味しく焼いてね」


「……うん。俺…頑張る…」


ラスが喜んでくれている顔を見てふわっと笑ったデスは再びフライパンに視線を落として集中し、コハクとデスが生クリームを作っている間に、リロイとティアラとグラースが芳しい匂いにつられて顔を出した。


「黒焦げのパンケーキが山積みになってるけど…ラス、これはどうしたの?」


「あ、ティアラおはよ。これはね、デスが作ってくれたの。食べれなくはないと思うからみんなで食べよ」


「いやいやあんなの食ったら腹壊すって。おいデス、お前が責任持って食えよ。わかったか?」


「……うん」


そして黒焦げのパンケーキの山は、あっという間にデスの胃袋に収まった。
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