魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
さすがに新郎新婦がドラゴンやケルベロスの背に乗って現れるのはあんまりだと考えていたコハクは、2年前の旅の時に使っていた2頭の白馬が引く真っ白な馬車を出現させた。

瞳を輝かせたラスが真っ先に馬車に近寄り、扉を開けて中をのぞき込んだり白馬の額を撫でてやったり馬車の周りをぐるぐるしたりで忙しく、カイがラスを抱っこして大人しくさせる。


「懐かしい…。コー、このお馬さんは2年前の時と同じなの?」


「ああそうだぜ、懐かしいだろ?今日はこれでクリスタルパレスまで行って、そのまま大聖堂まで乗り込ませる。大聖堂もきっちり結婚式仕様にしておいたし、チビも驚くぞー」


「そうなの?わあ、楽しみっ。お父様、楽しみだねっ」


頬ずりをしてくるラスの頬にキスをしたカイは、しっかり手を繋ぎながらも緊張した面持ちのリロイとティアラを目線で促して馬車に乗り込ませた。

…長い間ずっとラスを想い続けて縛られてきたリロイをラスの花婿に、と密かに望んでいたのだが…とんでもない伏兵が居たものだ。


「まさか魔王がラスの花婿になるとはね」


「なんだよ今さら文句言うなよな。俺と戦った時に言ったろ?“憑かれたくなければ娘を作るな”ってさ。お前とソフィーときたら速攻だったじゃねえか」


「私たちだって子供は欲しい。しかもこんな可愛い娘が生まれて喜んでいたら、影からお前の声が聴こえてソフィーが卒倒した。そんなお前が……まあ、今更言っても仕方ないのはわかってる。私のプリンセス、一緒にクリスタルパレスまで行こうか」


「うんっ。コーも一緒に行こ」


カイに抱っこされつつも、とても背の高いコハクとカイが立ち話をしている様は、ラスのお尻をずっとむずむずさせていた。

2人ともとにかくかっこよくて優しくて頼もしいし、何よりとても大切にしてくれる。

コハクはとても勇者様という外見ではないが、確かに自分にとっての勇者様に違いない。

父も本物の勇者様だし、これ以上幸せな環境に生きている女の子はきっと自分だけだと信じ切っていた。


リロイとティアラたちの馬車よりも一回り小さくて控えめな馬車に乗ったラスたちがクリスタルパレスに着いた時――街は、色とりどりの花々で彩られていた。

グリーンリバーから運ばれてきた金色の花や、クリスタルパレスの外に造られた農園で育んだ花たちのシャワーが降り注ぎ、新たなるリーダーの統治に胸を高鳴らせ、心から結婚式を祝福している様が手に取るようにわかる。

ラスが泣きそうになると、コハクとカイは笑いながら代わる代わるラスを抱きしめてあやした。
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