魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
「じゃあ大聖堂の席に移動しようか」


カイに促されて立ち上がったコハクはラスを抱っこしたままで、ふっくらした腹に視線を遣って微笑みかけると、控室を出た。

…移動中ずっと、ラスから突き刺さるような視線を浴びせられて、魔王、冷や汗。

外に出ていた間に機嫌が悪くなるようなことでもあったのか、膨れている頬を突いて破裂させると、お尻を撫でながら首を傾げた。


「どした?俺…なんかしたか?」


「…いいの。今は聴かないけど、後で絶対教えてもらうんだから。コー、早く行こ」


いやな予感がしたコハクが口を開けたり閉めたりしていると、裏口から外に出たラスたちが見たのは――大聖堂を囲む人々の姿だった。

皆がそれぞれ花を手にしていて、宣誓を終えたリロイとティアラを待ち受けて共に祝福しようとしている心にまた感動したラスが絶句していると、この世界で知らぬ者は居ない存在となっているカイの姿を見止めた人々が口々に歓声を上げた。


「お父様、みんなは中に入れないの?」


「大聖堂に入れるのは近親者のみなんだよ。後はリロイとティアラが招いた参列者たちが居るけれど、恐らくこの街の再興に関わった者たちだろう。私たちは1番前の席だからね」


「1番前っ?わあ…じゃあリロイとティアラのキスが間近で見れるね!」


リロイたちは恥ずかしがって自分たちの前ではなかなかいちゃいちゃしない。

手を繋いでいることは多いが、2人共秘密主義なために聞き出そうとしてもなかなか口を割らないし、常に一緒に居るためにその間に割って入るわけにもいかなかったのだ。


歓声に包まれながらも見上げても天井の見えない観音開きの真っ白で大きな扉を押したカイが中へ入ると、まず目に飛び込んだのは…神々しいまでのステンドグラス。

教本に乗っている有名な構図のものが色鮮やかなステンドグラスで現わされていて、思わず見入ったラスが言葉を失っていると、コハクが歩を進める。


「俺にとっちゃ小僧は邪魔で仕方ねえ存在だったけど…ま、うまいこと収まったな。大体からして俺とチビの仲を引き裂けるわけないもんな」


「うんうん、そうそう。コーと私の仲は引き裂けないんだから」


ラスがおうむ返しに返すとコハクが嬉しそうに笑い、中へ進むうちに皆の注目が集まったが、基本的に見られ慣れている3人は案内された席に座って心地よい静寂の時を楽しんだ。

リロイとティアラの結婚――

自分たちよりも早くて少し悔しかったけれど、2人の結婚をずっと望んでいたラスは、隣のコハクの肩にもたれ掛ってステンドグラスに見入った。
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