魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
デスと一緒に城内をさ迷っていると、前方から正装したリロイがやって来た。

どこかやつれていた風だったので声をかけようかためらっていると、リロイがデスとラスに気付いていつものように優しい笑顔を浮かべた。


「来てくれたんだね。身重なのにこんなところまでごめんね」


「ううん、どきどきわくわくしてる。ねえリロイ…大丈夫?ちょっと痩せた?」


「うん、式の準備で忙しかったのもあるけど…最近ずっと剣を握ってなかったから筋力が落ちたのかも。…僕は政務より身体を動かすことの方が好きだから、時間を作って鍛錬は続けるつもりなんだ」


そんなリロイの肩を抱いたのはティアラの父であるオーフェンだ。大木のように背が高く、ひょろりとしたオーフェンは、ぎくりとなったリロイに笑いかけて何度も肩をぽんぽんと叩いた。


「これはラス王女、はるばるお越しいただいてありがとうございます。…そちらの王国の騎士がうちの姫を娶るとは青天の霹靂でしたよ」


「オーフェン様…色々あったんです。でもリロイとティアラはすごくお似合いでしょ?ティアラが幸せになれてオーフェン様もとっても嬉しいでしょ?」


笑顔満面のラスに対して、リロイは苦笑して、オーフェンは苦虫を噛み潰したような顔になった。

…さっきまでこっぴどくリロイをじめじめいたぶっていたとはさすがに言えず、デスの腕から降りたラスが今度はリロイの腰に抱き着いてハグを交わす。


「僕はこの王国の次期女王を攫ったも当然だから、怒られる位のことはもちろん覚悟してたよ。魔王もきっと僕と同じ目に遭うと思うなあ」


「コーは強いから平気だよ。きっとお父様とも仲良くなれるはずだし、ベビーが生まれたらもっと仲良くなれると思ってるから大丈夫。…え?デス?」


話の途中、突然デスが腕を伸ばしてラスを抱っこすると、踵を返した。

驚いたラスがぽかぽか背中を叩くが一向に立ち止まる気配はなく、元来た道を歩きながらラスの頬に小さなキスをした。


「……顔が疲れてる…。……パーティー…魔王に止められる…」


「!や、やだ、今日は絶対参加するんだから!」


「………じゃあ…大人しくしてて…」


「うん、わかった」


伏し目がちに歩くデスの頬にキスを返したラスは、またぽこんとお腹を蹴るベビーの反応がくすぐったくて小さく笑うと、愛する男の元へと戻った。
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