魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
敷地内の教会…いや、教会という小さな規模ではなく、クリスタルパレス王国よりも壮大で神聖な空気の漂う大聖堂に移動したラスたちは、小さな子供たちが歌う聖歌を聴きながら椅子に座り、ステンドグラスから降り注ぐあたたかい陽の光を浴びたラスはうっとり瞳を閉じていた。


「コー…お腹が…」


「なに!?腹がどうした!?痛いのかっ?!」


ラスが腹を撫でながら問いかけた言葉に過剰反応したコハクが大声を上げて、その声が反響する。

参列者たちがざわめく中コハクの口を両手で押さえたラスは、笑いながら首を振ってコハクにぴったり身体を寄せた。


「違うよ、痛くないけど…ベビーがすっごく動いてるの。どうしたのかな、もう出て来たいのかな」


「駄目だぞベビー。10か月は腹の中に居なきゃいけないんだ。な、我が儘言うなって。ったく生まれる前から我が儘言うなんて、完全にチビ似だな。ふふふー」


「女の子って決まったわけじゃないんだからね。デスは知ってるんだよね?」


左隣に座っていたデスは、時に神が降臨するという神聖なる教会に死神の立場の自分自身が座していることに、最強なる違和感を感じてずっともぞもぞしていた。

だがラスが膝に乗せていた手をぎゅっと握ってきた時にすっと気持ちが軽くなり、指を伸ばしてラスの大きな腹に触れた。


「………秘密…」


「デスのいけず!今教えてくれれば服の色とかわかって楽なのにさ」


「コーは赤ちゃん服買ってきすぎだってば。しかもピンクとか白とか赤とか…女の子じゃなかったらどうするの?」


「いーや、女に決まってる!お馬さんだって用意したし、がらがらとかベビーベッドとか全部用意済み!後は生まれてくるだけだからな、ベビー」


頑として女だと言い張るコハクの腕に抱き着いたラスは、後ろに座っていたカイから背中を突かれて振り返った。


「うちの子供部屋は男の子でも女の子でもいいように準備してあるから、いつでも里帰りしておいで」


「うんっ。お父様大好きっ」


親子同士の会話でも気に入らないコハクが鼻を鳴らして拗ねると、司祭が祭壇に上がった。

式が始まるのだとわかって大聖堂が静寂に包まれた後、パイプオルガンが鳴り響く。

脇の部屋から真っ白なタキシード姿のリロイが出てきてラスに笑いかけると、ラスは勇者様然としたリロイにぽうっとなってしまい、コハクから手で両目を隠されてしまった。

そして、後方の扉が開き――オーフェンの手に引かれたティアラが入場してきた。
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