魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
コハクは“完全”にこだわる。


ラスの父のカイと対峙した時は“完全”だった。

だが倒された後、ラスの影となった瞬間から“不完全”になった。

そして16年を経て“完全”になったのも一瞬のこと――


さらにまた2年を経てラスとまた会うことができたが…今の自分は“不完全”だ。


「ねえコー…心臓がすっごくドキドキ言ってるよ。大丈夫?壊れちゃわない?」


「まあ…そりゃあ…この状況じゃ仕方ねえだろ。ちょ、少し離れろって」


「やだ」


――夜になり、灯りのつけていない部屋…

窓を開け放たれた庭には花の妖精や精霊がやわらかい光を放ちながら飛び交い、コハクとラスは薔薇の香りのするベッドで指を絡め合い、抱き合っていた。


…ただし、“不完全”なコハクはラスを抱こうとはしない。

ラスの影に憑いていた時もこだわり続け、自身に課したルール。


「コー、見て。指輪…ずっとつけてたらちょっと傷ついちゃった…」


「あー、ほんとだな。直してやるから貸してみろ」


「ううん、いいの。コーと一緒に戻れたら直してもらうね」


――ラスは本当に綺麗になった。

大きくて快活だったグリーンの瞳は少し目尻が下がってやわらかい印象に。

真っ白な肌はそのままに口紅も引いてないのに真っ赤な唇は何度貪っても足りないほどに魅力的だ。

まばゆい金の髪は絹糸のような手触りで、指で梳くと隙間から零れてゆくほどに艶やかで、美しい。


…少々色々我慢するのが大変だが、魔王は耐えていた。


「駄目だぞ俺。アレコレしたいけど、我慢だ俺。ああでも…キスくらいいいよな?ちょっと。ちょーっとだけ触るくらいいいよな?」


コハクの固い胸に頬ずりしていたラスが顔を上げてコハクの鼻をつまむと…魔性を発揮した。


「じゃあ私から触るのはいいの?」


「!!だ、駄目だぞ、爆発すっから!」


「コーの馬鹿、せっかく会えたのにキスだけなんて…」


「我慢だ俺!我慢だチビ!」


――2年前のあの日、1日中と言っていいほどに愛し合い、これがコハクの求めていたものだと知った時のあの喜び――

それを再び感じるために試練に立ち向かう。


コハクのために。
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