魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
「リロイ、ティアラを抱っこ!抱っこして外に出てみんなにお祝いしてもらって!」


昨日に引き続き、ラスにそうせがまれたリロイは、ラスの我儘を聞き入れてティアラをひょいと抱き上げると、バージンロードを引き返して大聖堂から出た。

外には屋根のない真っ白な馬車が止まり、これから彼らは馬車で街を練り歩いて皆に祝福されるのだ。

王国からティアラを奪う態になったリロイたちに悪意を持つ者が居るかもしれないので、コハクは密かに魔法を使って馬車に結界を張ると、色とりどりの花弁が詰まった籠を手にいそいそ立ち上がったラスの手を引いてリロイたちの後に続いた。


「ほんとに綺麗っ。はい、コーとデスにも花弁あげるから、みんなでやろ」


「みんなでやる!?ちょ…いやだけど、すげえコーフンする!」


「?なに言ってるの?ねえデス、ティアラたち綺麗だったね。どう思った?」


ひとりコーフンしているコハクを放置したラスは、デスと手を繋いで外に出ると、先回りをして馬車のすぐ近くに陣取った。

緋色の騎士団がガードをしてくれたので難なくベストポイントを手に入れたのだが、デス的外れな感想を口にした。


「………ラスは……もっと綺麗なはず…」


「私?うん、同じくらい綺麗だといいな。デスもいつか大好きな人とこんな結婚式挙げれたらいいね。一生の思い出になるよ」


「…………俺は…無理…。だって……ラス……魔王と結婚するから……」


びっくりした顔で見上げたラスは、相変わらず無表情ながらも少し拗ねたように唇を尖らせているデスにきゅんとして、背伸びをしてデスの頬にちゅっとキスをした。

それを見逃さなかったコハクは無理矢理2人の間に割って入ると、ラスの肩を抱いて牽制した。


「俺の天使ちゃんに触るんじゃねえよ。ほらチビ、来たぞ。声かけてやれよ」


「うんっ。リロイ!ティアラ!結婚おめでとう!お幸せにね!」


「ラス、ありがとう。後でまた城で会いましょう!絶対よ!」


溢れんばかりの笑顔に包まれたティアラが応えて、2人は馬車に乗り込んだ。

これ以上はしゃぐと体調に影響するかもしれないので、馬車を追いかけてずっとお祝いしていたい気持ちもあったのだが、そこをぐっと堪えたラスは、コハクの腕を引っ張って抱っこをせがむと、城を指した。


「コー、戻ってよ。じっとしてないとパーティーに参加できなくなっちゃうっ」


「はいはい。じゃー俺が蜂蜜入りのホットミルク作ってやるよ」


王国は歓喜に包まれ、王女を送り出す。

王女は王妃となり、永久の繁栄を皆に誓った。
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