魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
今までは誰に嫌われても平気だったが…

ソフィーからの歩み寄りはコハクを喜ばせて、いつもはラスにしか見せない優しい笑みを浮かべてしまい、ソフィーやフィリアやティアラの頬を赤くさせた。

元々は整いすぎる程に顔が整っているのだが、どちらかと言えば性格の悪さが顔に全面に現れているので、こんな風に優しく微笑されると…ぽうっとなってしまう。

だがコハクはラスにしか興味のない男。

ぽうっとなってしまっているソフィーたちをまるで気に介さず、膝の上のラスと笑い合ってイチゴを食べさせていた。


「そこの魔王、私たちの妃に色目を使うのはやめてもらおうか」


「はあ?色目なんか使ってねえし。あー、でも俺は超絶かっこいいし、そっちから惚れるのは止めようがないぜ。残念ながら微塵も相手にしねえけどな」


「コー、眠くなってきちゃった…」


それまで会話に加わろうと必死に眠気と戦っていたラスだったが、とうとう目を擦って身体が揺れてしまうと、コハクが解散を要求した。

誰もがラスが無事に出産することを望んでいるので、皆が腰を上げると、次々にラスの頬にキスをしていく。


「ラス、僕たちはいつまでも仲間だから。君から距離を作られることほどつらいことはないんだ。それを忘れないで」


「リロイ…うん、わかった。とっても素敵な結婚式を見せてくれてありがとう。明日帰るけどまたすぐ遊びに来るから」


気が付けばデスはソファに横になってすやすや眠っている。

死神のあどけない寝顔を拝める機会など滅多にないので皆が興味深げな顔をしながらも部屋を出て行くと、コハクは揺れるラスの身体を支えながら、マタニティドレスを脱がせて生地の暑いネグリジェを着せた後、分厚い靴下も履かせた。

…ラスの身体が少しずつ重たく感じる度に、愛も増してゆく。

2人分の命の重みを感じながらベッドにラスを横たえさせると、真ん丸になって眠っているデスの身体に掛布団をかけてやった。

もう…迷うことは許されない。

ラスに不死の魔法をかけることをずっと躊躇して地下室に籠る日々が続いたが…それはもうやめよう、と思っていた。

ベビーが生まれてくるまでずっとずっと傍に居て――そしてベビーが生まれてからも、ラスにうざがられる位ずっとずっと傍に居るために、躊躇してはならない。


「俺…頑張るから」


“笑いの絶えない家族を作ろう”と約束したから――
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