魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
陣痛が始まってから1時間ほど経った時――相次いでカイとソフィー、そしてリロイとティアラがラスのために駆け付けて来た。
双方共に政務をほったらかしにしてきたのだろうが、今日この瞬間ほど大切なことはない。
絶えず脂汗が額に浮かんでいるラスの傍でずっと手を握りしめているコハクの手首には、ラスの爪痕がくっきりと残っていた。
「私のプリンセス…苦しそうだね…でも君にしかできないことだから、一緒に頑張ろうね」
「お父様…私も…私もこうして、生まれて来たんだよね…?お母様が、頑張ってくれたんだよね…?」
まだ10代の頃にこうしてラスを出産し、それが難産であったことを思い出したソフィーは、コハクと反対側に回り込んで額に張り付いている金の髪を払ってやると、力強く頷いた。
「そうよ、あなたもやんちゃで、少し早めに生まれて来たの。小さな女の子でね、とても心配だったわ。ラス…女は強い生き物なの。だからあなたにもきっと耐えられるわ」
「うん…わかった…っ。リロイ…ティアラ…」
全員が枕元側に押しづめ状態になってしまい、ラスを独占できなくなったコハクは舌打ちをしたが、こうしてラスを勇気づけてくれる者たちが駆け付けてくれたことは吉報だ。
1階の庭からは、遠吠えのような甘い鳴き声を上げているドラちゃんとケルベロスの声がするし、エプロン姿の魔物たちもタオルやお湯を運んできつつ心配そうな顔をしている。
この命の瞬間をずっと心待ちにしているコハクは、また激痛が襲ってきて唇を噛み締めるラスの腹に手を乗せて、何度も何度も撫でた。
「ベビー、すぐ抱っこしてやるからな。どんなに夜泣きしたって俺が夜通しあやしてやるし。お前の記憶がないうちからいろんな場所に連れてってやるからな」
「コー…痛い…っ、痛いけど…元気に、生まれてきて…!」
「はじめてのお産でとても痛いでしょうが、安産ですよ。もうそろそろ頭が見えてきますからね」
足元でラスを勇気づける医者の言葉に大きく頷いたラスは、安産と聞いてほっとすると、窓際で独りじっと立っているデスに手を伸ばした。
命を救ってくれた恩人――傍に居て、コハクの次にベビーを抱っこしてほしい。
「デス…コーの隣に来て…。抱っこしてあげてね…?」
「………うん…」
歩み寄って来て枕元に座ったデスの手を握ったラスは、反対の手でコハクの手を握り、痛みに耐える。
双方共に政務をほったらかしにしてきたのだろうが、今日この瞬間ほど大切なことはない。
絶えず脂汗が額に浮かんでいるラスの傍でずっと手を握りしめているコハクの手首には、ラスの爪痕がくっきりと残っていた。
「私のプリンセス…苦しそうだね…でも君にしかできないことだから、一緒に頑張ろうね」
「お父様…私も…私もこうして、生まれて来たんだよね…?お母様が、頑張ってくれたんだよね…?」
まだ10代の頃にこうしてラスを出産し、それが難産であったことを思い出したソフィーは、コハクと反対側に回り込んで額に張り付いている金の髪を払ってやると、力強く頷いた。
「そうよ、あなたもやんちゃで、少し早めに生まれて来たの。小さな女の子でね、とても心配だったわ。ラス…女は強い生き物なの。だからあなたにもきっと耐えられるわ」
「うん…わかった…っ。リロイ…ティアラ…」
全員が枕元側に押しづめ状態になってしまい、ラスを独占できなくなったコハクは舌打ちをしたが、こうしてラスを勇気づけてくれる者たちが駆け付けてくれたことは吉報だ。
1階の庭からは、遠吠えのような甘い鳴き声を上げているドラちゃんとケルベロスの声がするし、エプロン姿の魔物たちもタオルやお湯を運んできつつ心配そうな顔をしている。
この命の瞬間をずっと心待ちにしているコハクは、また激痛が襲ってきて唇を噛み締めるラスの腹に手を乗せて、何度も何度も撫でた。
「ベビー、すぐ抱っこしてやるからな。どんなに夜泣きしたって俺が夜通しあやしてやるし。お前の記憶がないうちからいろんな場所に連れてってやるからな」
「コー…痛い…っ、痛いけど…元気に、生まれてきて…!」
「はじめてのお産でとても痛いでしょうが、安産ですよ。もうそろそろ頭が見えてきますからね」
足元でラスを勇気づける医者の言葉に大きく頷いたラスは、安産と聞いてほっとすると、窓際で独りじっと立っているデスに手を伸ばした。
命を救ってくれた恩人――傍に居て、コハクの次にベビーを抱っこしてほしい。
「デス…コーの隣に来て…。抱っこしてあげてね…?」
「………うん…」
歩み寄って来て枕元に座ったデスの手を握ったラスは、反対の手でコハクの手を握り、痛みに耐える。