魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
ベビーが少しだけ見せてくれた左手の中の水晶は、まさしく魔力に満ち溢れた強力なものだった。

魔法を使える素質があるかもしれない――コハクはそれを喜び、ラスは喜ぶコハクを見て、喜んだ。


「コー、ベビーは騎士様じゃなくて魔法使いになるかもね。でもこの水晶…いつまで握ってるままなのかなあ?」


再びベッドに戻ったラスが腕の中のベビーを見つめていると…瞼がぴくぴくと動いている。

長い黒いまつ毛の下に隠れている瞳の色が何色なのか、コハクとラスも気にしていたのでじっと見つめていると、瞼がゆっくりと開いた。



「わあ…綺麗な赤…。コー、やっぱり赤かったね。ルビーの色みたい」


「やっぱ赤かったかあ。俺のDNAってすげえのな、こいつそっくりそのまま俺みたいじゃん」


「コーが赤ちゃんだった時もベビーみたいにすごく可愛かったよねきっと。ベビー、ママが見える?パパの顔が見える?」



新生児の頃は目が開いても見えているかどうかわからない、と言われているが――ベビーははっきりとコハクとラスを見つめて、笑った。

へにゃっと笑った笑顔を見せた後、またラスの胸をまさぐってお乳を要求するベビーに応えたラスがお乳を与えている間、コハクはベビーの左手をちょんちょんと突いて頬にキスをした。


「その手の中、もうちょっとよく見せてくれよ。な、いいだろ?秘密は駄目だぞ」


真っ赤な瞳で見つめられながらお乳を飲んでいるベビーにうっとりしてしまっているラスにやきもきしつつ、左手の握り拳がまたゆっくり開く。

ラスの爪の先ほどの本当に小さな水晶の欠片は、コハクが触れた途端に閃光を発した。

するとお乳から顔を離したベビーが、欠片を取り戻したいかのように手を伸ばして泣き顔になったので、コハクはまた左手に欠片を握らせると、ベビーにじっと見つめられて赤面。


「くそう…可愛いなこいつ」


「だってコーと私の赤ちゃんだもん、可愛くないはずないよ。で…その水晶がなんだかわかった?」


「危険なものじゃないのはわかった。ベビーの許可が出たらネックレスにでもしてやって肌身離さず持たせてやれば、水晶の加護を得ることができるかもな」


「すごい…。でもベビー、パパとママが守ってあげるからね。綺麗な瞳…」


コハクの瞳の色よりも明るい赤――

ベビーは両親の言葉にまたへにゃっと笑って指をくわえた。
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