魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
ラスの元に戻ったコハクは、ベビーと一緒にベッドですやすや眠っているラスの寝顔を見て頬を緩めた。

まだ20歳にも満たないラスが妊娠して子供を生んで…

この前までは城に閉じ込められて何も知らずに暮らしていたのに、この2年間をラスが一体どうやって過ごしてきたのか…ラスはあまり語ることがない。

聞いてみても、“コーはここに居るからもういいでしょ”と言って話をはぐらかされるのだが…話したくない程つらい日々を送っていたということだろう。


「チビ…よく寝てるけど飯まだだし起こさないとな。あ、デス、今日これから何時間かベビーを預かってくれよ。いいだろ?」


「………うん…。一緒……寝る…」


「ベビーを腹いっぱいにしてから預けるよ。久々にチビと2人きりで過ごしたいんだ。…なんだよその顔は。俺はチビの旦那なんだから当然の権利だろ」


デスが何も言っていないのにどこか言い訳のようなことを口走ったコハクは、ラスの肩を揺すって起こすと、先にぱっちりを目を開けたベビーの頬を突いた。

同じようにデスが骨の指で頬を突くと、ベビーが小さな手でデスの人差し指を握って口に入れてちゅうちゅうと吸い出す。

めらっときたコハクが結構強めにデスの脇腹を肘で突いていた時、ラスが目を擦りながらようやく身体を起こした。


「飯食った後ちょっと外散歩しようぜ。久々にデートしたいんだけど」


「デート?うんいいよ。でもベビーが…」


「デスが預かってくれるってさ。な、ちょっとだけ!そら行くぞー」


ラスの返事を待たずにラスを抱っこしたコハクは、まだ指を吸っているベビーを名残惜しげに見て背を向けて部屋を出る。

ベビーを生んでからほとんど外に出ていなかったラスは、螺旋階段を下りて城から外に出ると、上空を見上げた。

この街を春にするために外気を遮断している虹色のヴェールの奥に、寒さに凍えるように星々がきらきらと瞬いている。

きっと外に出れば今は真冬で極寒なのだろうが、ここに居ると四季の移り変わりを感じることができない。


「ねえコー、あったかいとことか寒いとことか、暑いとことか涼しいとことか…別荘があると楽しいよね。ベビーに色んな世界を教えてあげるためには必要だと思わない?」


「ああ、そうだな。たとえば一緒に雪だるま作ったり、一緒に海で泳いだりってことだろ?…チビと海…水着…!」


話が脱線してコーフンしているコハクの頭を叩いて我に返らせたラスは、また夜空を見上げてそんな未来を想像した。
< 669 / 728 >

この作品をシェア

pagetop