魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
ラスのデザインしたウェディングドレスは、コハクのリクエスト通り胸の辺りが大胆にカットされたものだった。

ふわふわのレースを沢山あしらい、ラスが毎日一生懸命練習してようやく完成させた花冠とブーケも完成した。

体型が戻っていることはコハクに確認してもらっていたが…後は試着だ。

ウェディングドレスはこれから仕立て屋が持ってくる。


「コーは大丈夫だって言ってくれたけどやっぱり不安だし。ねえティアラ、このドレスどう?綺麗でしょ?これはデザイン画だけど、これから本物がここに着くから」


「ええ、すっごく素敵。あなたにとてもよく似合うと思うわ」


ベビーが生まれて以来久しぶりに会いに来てくれたリロイとティアラは、代わる代わるベビーを抱っこして嬉しそうにしていた。

またベビーも大人しく抱かれて、リロイたちの顔を瞬きもせずにじっと見つめている。

数時間後ようやく戻ってきたコハクは、行儀悪くテーブルに長い脚を投げ出してふんぞり返ってソファに座りながら、にやついていた。


「俺の見立てではチビは前より痩せた。測らなくったってわかるし。逆にウェディングドレスを詰めないとぶかぶかになるかもな」


「そう?ベビーを抱っこして結婚式したいな。みんなに自慢するの」


ベビーはますますコハクに似てきて、だんだん瞳の色も鮮やかになっていく。

成長すれば確実にコハクそっくりの男になるだろうが、中身もそっくりならば大問題だ。


ラスはそれを気にしていなかったが、ずっとコハクにいじめられ続けてきたリロイはそれを危惧していた。


「影にそっくりなのは外見だけだといいんだけど」


「ああ?中身も俺そっくりだと何の問題があるんだよ。端的に述べてみろよ」


にじり寄られたリロイが壁際に追い詰められていると、ウェディングドレスを着せたマネキンを抱えた仕立て屋がノックと共に部屋に入って来た。

歓声を上げたのは、ラスとティアラ。

コハクとリロイは、ラスがそのドレスを着ている姿を想像してつい口元と頬が緩んでしまい、目敏くそれを発見されたリロイはコハクから羽交い絞めされて苦しんだ。


「うっ、か、影、首が締ま…っ」


「てめえ今見惚れたろ。チビが着てんの妄想したろ?立派な浮気だぞ、ボインに言いつけてやる!」


「そ、想像位いいじゃないか。僕はラスの幼馴染だぞ」


「コー、試着してくるから待っててねっ」


嬉しそうなラスの笑顔が弾けた。
< 674 / 728 >

この作品をシェア

pagetop