魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
仕上がったウェディングドレスを着たラスが駆け足で戻って来ると――コハクとリロイは口をぽかんと開けて見惚れてしまった。


元々淡い色がよく似合うが、まるで天使のように…女神のように美しく、くるくると回って踊るようにして嬉しさを爆発させていた。


「サイズもぴったり!コー、どう?このウェディングドレス可愛いでしょっ?」


「…ウェディングドレスが可愛いっつーか…」


花の蜜に吸い寄せられるようなふらふらとした足取りでラスの前に立ったコハクは、むき出しの細い両肩に手を乗せて腰を折って顔を近付けると、ラスの大きな緑の瞳を覗き込んだ。


「チビがすげえ可愛い。なんだこれ。やっぱ俺の天使ちゃんは宇宙一可愛い!」


「きゃーっ!」


いきなりラスを頭上まで抱え上げてでれでれしまくる魔王に肩を竦めたリロイは、やっとここまでこぎつけたことを心から嬉しく思っていた。

いわば2年間も離れ離れになってしまった原因を作ったのは自分だったから――ずっとずっと、それが悔やまれて仕方なかった。


「結婚式は来週だって言ってたよね。なんとかスケジュールを調整して参加できそうだから、カイ陛下と一緒に参列するよ」


「うん、ありがとうリロイ!私もこことゴールドストーン王国で結婚式挙げないと駄目だって言われたから、このウェディングドレスを2回も着れるんだよ。コーもタキシード着るんだよ、いい?」


「わかってるって。あー撫で回したい!ぺろぺろしたい!お前らちょっと部屋から出てけよ」


いちゃいちゃしたくて仕方のないコハクがリロイたちを睨みつけると、膝を抱えてソファに座っていたデスの手を引っ張って立たせたリロイは、くすくす笑っていたティアラと共に部屋を出て行った。

コハクがラスに振り返った時――ラスは綺麗に編んだ金色の花の花冠を頭に乗せて、本当の女神のように見えた。


「でも2回しか着れないなんて悲しいな…。あ、そうだ、いつか女の子が生まれた時に着てもらおうかな」


「はあ?!女の子が生まれたら嫁になんか出さねえし!このウェディングドレスはいつでも見れたり着れたりするように飾っとこうな。チビ…」


顔を上げたラスの唇にちゅっとキスをしたコハクは、ラスを抱っこしてバルコニーに出た。


ラスとようやく正式な夫婦になれる――


そして、不死の魔法をかけて、永遠に幸せになるのだ。
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