魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
互いに身体を擦って洗い流した後、小さな宝物をふわふわの毛布で包んでベビーベッドに寝かしつけた。

あたたまって眠たくなったのかすぐにすやすやと寝息が聞こえ、ラスが寝顔に見入っていると――コハクがラスの足元でひざまずいた。


「コー?どうしたの?」


「チビにこれを。俺たちの世界を、チビにも見てほしい」


コハクがラスの目の前で握り拳を作ってみせると、かつて同じ仕草をされたことがあることを思い出したラスは、大きな緑の瞳をさらに見開いた。

そしてゆっくりと大きな手が開くと…そこにはまばゆいばかりの透明な光を発する水晶のリングが乗っていた。

リング台はプラチナで、目立たない程度の水晶がこれでもかという位の光を発している。



「こ、コー…これ…」


「水晶の女王に頼んで作ったんだ。これは願いを叶えるとかそんなものじゃなくて、ひとつだけ、奇跡を起こすことができる。…嵌めてもいいか?」


「う、うん。奇跡って…なあに?」


「すぐわかるって。ほら、左手出せよ」



左手の薬指には2年前コハクから贈られたガーネットのリングが嵌まっていたが、コハクはその上からラスの指にぴったりなリングをするすると嵌めた。

ラスはさらに輝きを増した薬指をじっと見つめていたが――何か奇跡のようなものが起きた気がせずにきょとんとした顔で見上げて来るコハクを見つめた。


「わからねえのか?仕方ねえな」


「え?コー、何が………あ…、えっ?コー!これって…」


コハクが指を鳴らすと、屋上からふわりふわりと金色の花が舞い落ちる。

その花弁に交じって小さな人影たちが踊るように舞っている姿が見えた、ような気がした。

瞬きを忘れる位にラスがその人影を凝視していると、それが近付いて来て姿がはっきりと見えた。


金色の羽に、金色の長い髪を緩く結い上げた半透明の妖精…金色の花の妖精だった。



『お姫様、やっと私の姿を声を見ることができたのね?あなたが屋上に来る度に私たちいつも話しかけていたのよ。これからはこうしてお話ができるわね』


「妖精さん…!コー…私…妖精さんが見える!妖精さんとお話してる!すごい…この水晶のリングのおかげなのっ?」


「ああそうだ。これが俺やベビーの見ている世界。チビだけ仲間外れにしたくねえ。同じ世界を見て、同じ世界で生きよう。チビ…いや、ラス…俺と結婚してくれ。俺の花嫁になってくれ」


「…ぅっ、ぐす…っ、うん…はい…!コー…コハクのお嫁さんにして下さい…!」


「ばーか、泣きすぎだっつーの。ほら、鼻噛めよ。ちーん!」



泣きじゃくって抱き着いてきたラスの背中を撫でてやったコハクは、周りを飛び交って金色の軌跡を作る妖精たちと笑い合いながら、ラスを抱きしめた。
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