魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
結婚式当日の朝は、とても穏やかな気分で目が覚めた。

先に起きたコハクはぼーっとしたままがりがりと髪をかきあげて隣で眠っているラスを優しい瞳で見つめると、ベビーベッドでもぞもぞ動いている小さな生き物に話しかけた。


「ようベビー、昨日の夜見たことや聞いたことは誰にも内緒だからな」


「あばば」


パンツを穿いてシャツのボタンを留めずに羽織っただけの恰好でベッドから抜け出たコハクは、ベビーを抱っこしてあやしてやりながら、いつも右手に握り込んでいる水晶を見せてもらった。

いつも肌身離さず持ち続けている水晶は、ベビーの成長に比例して少しずつ大きくなっているように見える。

ただ悪い作用を与える様子はないので、いつかネックレスにでもしてお守りにしてやろうとラスと話し合った。


「コー…おはよ」


「起きたか、はいおはよ。ベビー、ママのお乳の時間だぞー」


またベッドに潜り込んでラスの腕にベビーを抱かせると、すぐにお乳を飲み始めた。

大変なママっ子のベビーはお乳を飲みながらずっとラスを見上げていて、時々へにゃっと笑ってコハクたちを癒しまくった。


「ベビーがお乳を飲み終えたらすぐ準備しなきゃ。お父様たちはどうしよう」


「ドラを使いに出して迎えに行かせる。カイの奴、今日は絶対泣かせてやる!」


「お父様とバージンロードを歩けるんだね…。コー、夢を叶えてくれてありがとう」


「お前の夢は俺が全部叶えてやる。俺は魔法使いだからな、なんでも可能なんだ」


見つめ合って自然に唇を重ねると、まるで2人の仲を引き裂かんばかりに腕の中のベビーが暴れた。

すでにライバルとしての要素を備えているベビーのおでこにコハクとラスがそれぞれキスをすると大人しくなり、その後一緒にお風呂にはいって汗を流すと、人の気配がしたのでドアを開けると、見た光景にコハクは目を丸くした。


「おはようございます。準備をはじめてもいいですか?」


「お前らいつからそこに立ってたんだ?ここは俺とチビの部屋だから準備は違う部屋!…ん?チビ?どこ行った?」


少し目を離した隙にもうどこかへ行ってしまったラスに焦ってバルコニーに出ると、今度はラスが目を丸くしていた。


「コー…街がお祭りになってる!」


「今日は俺たちの結婚式なんだぜ。チビ、みんなに祝ってもらおう」


誰からも祝福される花嫁になってもらうために――
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