魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
ウェディングドレスを着る段階になり、リロイが退出した後ティアラも続こうとしたのだが、ラスに腕を引っ張られて引き留められた。


「手伝ってほしいの。すっごく身体にぴったりに作ってもらったから着づらくて…」


「ええいいわよ。…ラス……あなた…本当に綺麗な身体…」


ガウンを脱いで下着だけの姿になったラスの身体は驚くほど細くて白い。

艶めかしい感じではなく、例えるならば草原を走る小鹿のような…すんなりと伸びた手足と細い腰が何故か初々しく感じられて、コハクやリロイが夢中になるのもなんだかものすごく納得が出来た。

女性に対してどきどきしたのははじめての経験で、動揺しながらもラスに肩を貸してウェディングドレスに脚を通し、ゆっくりとファスナーを上げる。

ラスはその間じっと鏡を見つめていて、花嫁になる実感を噛み締めているように見えた。


「綺麗よ、ラス。あなたもウェディングドレスもとても素敵」


「ありがとうティアラ。ベビーにも真っ白な産着を着せてあげるの。この子ね、ほとんど夜泣きしないんだよ。抱っこするとすぐ胸ばっかり触るの。パパ似なんだから」


「そ、そうなの?なんだか2人目も早そうね…。毎年子供ができちゃうんじゃない?」


「それでもいいよね、コーは大家族がいいって言ってたから、廊下を子供たちが走り回って、私が“めっ”って怒るの。楽しそうでしょ?コーも私も一人っ子だから兄妹は沢山欲しいな。あ、私には弟か妹ができるから、コーのために大家族を作るの」


夢を抱いて嬉しそうに笑うラスの白いうなじが美しく、ファスナーを上げきったティアラは、壁に飾られてあった金色の花のブーケと花冠を取ると、ラスの頭に花冠を乗せた後、手にブーケを持たせた。


――こんなに完璧な花嫁は、見たことがない。

金色の髪はまっすぐで美しく、金色の花の花冠はきらきらと輝き、足元まで垂れたブーケからは甘くて美味しそうな香りがする。

気を引き締めるように背筋を伸ばして鏡に映る自分自身と対峙しているかのようなラスの姿は、彫刻のように美しかった。


ティアラは声をかけるのをためらい、ベビーベッドで指を咥えてラスを見ていたベビーを抱っこすると、あやすようにゆっくり揺らしてやりながら、頬にキスをした。


「あなたのママはとても綺麗ね。魔王も…パパもきっとびっくりして言葉が出ないわよ」


「あぶぶ」


ベビーの表情もまたどこかうっとりしているように見えた。
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