魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
ラスの準備が終わったという知らせを聞いて部屋に戻ったコハクは――

ラスの凛とした姿に絶句して、ドアを開けたままの姿勢で立ち尽くした。


笑顔に溢れている姿ばかりを見てきたから、表情を引き締めて鏡の中の自分自身を見つめているラスの真顔を見る経験など、今までほとんどなかった。


純白のウェディングドレスに身を包み、笑顔ではしゃいでいるものだとばかり思っていたコハクは…そんなラスの姿に、見惚れていた。


「ち、び…」


「あ、コー。見て…私…似合ってる?おかしいところはない?」


「…あるわけねえだろ…。なんなんだよお前…試着姿は見たけど…なんか全然違う…」


コハクが目の前に立つと、またラスもタキシード姿でネクタイを緩めずにちゃんと締めているコハクを見上げて、もじもじした。

色白の男だから黒がとても映えて、宝石のように美しい赤い瞳が真っ直ぐ自分を見据えていることに恥ずかしくなって俯くと、顎を取って上向かせられた。


「はしゃいでると思ってたけど、どした?ああ…駄目だ!可愛い!我慢できねえ!」


「あーっ、魔王、駄目よ!すごく綺麗にお化粧してもらってるんだから、触っちゃ駄目!」


顔を寄せてぺろぺろしようと思った矢先にティアラに止められてぐっと堪えたコハクは、確かにいつもよりものすごく綺麗になったラスを抱っこすると、至近距離でその顔をまじまじと見つめてラスに頭を叩かれた。


「コー、見過ぎだよっ」


「だってすげえ可愛いんだもん。ああ早くみんなに見せびらかしたい!チビ、行くぞっ」


ふわふわのレースに彩られて足元が見えないラスを姫抱っこしつつ、キスしたい衝動に何度もかられながらも後ろをついて来ようとしたデスに命令をした。


「式場までベビーを連れて来てくれ。お前に任せたからな」


「………わかった……」


カイやリロイたちは会場となる教会に先に移動し、コハクとラスはこれから城を取り囲んで祝福してくれている人々に応えながらゆっくりと会場を目指す。


コハク自身の脚でラスを抱っこしたまま歩き、皆にラスを見せびらかすつもり満々でいた。

そしてデスは、言われた通り部屋に戻ってまた花の妖精を手に掴もうとしているベビーの小さな手に骨の人差し指で触れると、その指をベビーがきゅっと握り込んでへにゃっと笑った。


「………俺が……守って…あげる……」


――囁いた時――

デスの身体が白く発光した。
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