魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
ラスの手荷物は例のショルダーバッグひとつ。

四精霊に何をねだるわけでもなく出発しようとしたので、逆に四精霊が慌ててラスを引き留めた。


「ちょ、ちょっとちょっと!何も要らないの!?」


「え?あの火山に行って石を取ってこればいいんでしょ?」


…アバウトすぎる。

火山に着くまでの間に毒の沼があったり恐ろしい魔物が棲む森もあるのに、ラスはけろっとしていてコハクばかりを見てにこにこしていた。


「それはそうなんだけど…ちょっとほら、サラマンダー!」


「…これを持って行け」


「地図?」


サラマンダーの気質は獰猛で気性が荒く、人々を恐怖のどん底に突き落とすのが好きな超S体質だったが、どうしたことかラスを死なせるのが惜しく、普段住処にしている火山までの地図を手渡した。


「そこに俺の城がある。石は玉座に置いてきた。死なずに石をここまで持って来い」


「うん、わかった」


またもや明瞭な返事で、コハクが肩を竦めながらため息をついた。


「チビはそういう奴なんだって。チビ、無理すんなよ。お前に何かあったら…」


「うん、わかってるよ。コー、私を信じて」


ウサギを抱っこし、肩にはリスとインコが乗り、四精霊とコハクに手を振った。


「行って来まーす!」


「気を付けろよ!」


――とにかくラスのことが心配でたまらないコハクはラスの背中から目を離すことができず、早速いらいらと足踏みをしていると…


「コー!」


「ん?」


ラスが立ち止まり、全開の笑顔で大きく手を振りながらぴょんぴょんと跳ねた。



「コーにまた“チビ”って呼んでもらえて嬉しいっ!すぐ帰ってくるからね、四精霊さんたちと喧嘩しちゃ駄目だよっ!」


「…ぐはぁっ!ち、チビっ、お前…可愛すぎる!!!」



真っ赤な顔を両手で隠しながら悶絶するコハクと、あきれ顔の四精霊。

その間にラスはさっさと森の奥に消えて行き、指をぱちんと鳴らすと庭の湖の水が球状になって浮かび、コハクの掌の上でふわふわと浮きながら、先程別れたばかりのラスの姿を映し出した。


「チビ、ずっと見守ってるからな」


ついて行かないだけ。
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