魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
コハクに抱っこされたまま城の外に出ると、ティアラの結婚式の時のように、城の周囲は大勢の人々に取り囲まれていた。

中には恐らく観光目的で偶然訪れた人々も居たようだったが、およそ大半はグリーンリバーに住む住人と、クリスタルパレス王国から祝福に来てくれた人々だ。

改造済みのエプロン姿の魔物たちが警備を担当して教会までの道のりは理路整然とされており、足元には色とりどりの花弁が敷き詰められていた。


「コー…すっごく綺麗…!みんながお祝いしてくれてるよ!コー、下ろしてっ」


「やだねー。なんで俺が馬車やドラに乗らずに歩いて教会まで行こうとしてるのかわかってねえな?チビを見せびらかすためなの!教会に着いたら下ろしてやっからじっと抱っこされてろ!」


「うん、わかった。じゃあ私はみんなにコーを見せびらかすんだから」


コハクの角度からは、ラスの盛り上がりに盛り上がった胸の谷間がばっちり見えていた。

足元の花弁は見た目は綺麗だが、時々足元を滑らせて歩くのが難しく、ちゃんと前を見ながら歩かなければならないのに、ついラスの胸に意識や視線や何もかもが集中してしまう。

ラスはコハクの首に腕を回しながら歓声に応えていて、鼻息の荒い色ぼけ魔王には気付いていない。

また人々の歓声は絶え間なく惜しみなく降り注ぎ、ラスの人気の高さを窺わせた。


――ラスは16年…18年もの間、母国の城に閉じこめられて育ったため、“ラス王女はとても美しいらしい”という噂だけが独り歩きしていたため、ラスをはじめて見たという人々も多い。

噂の内容は嘘ではなく、純白のウェディングドレスを着て人生で1番美しい日を迎えたラスを見て、興奮状態に陥って気絶する者すら現れた。

またコハクもグリーンリバーの領主でありながら人前に姿を現すことはほとんどなかったので、こんなに若くセクシーで、本当に人間なのかと疑ってしまうほどに美しい男だったことをはじめて知った主に女性たちもまた、足腰が立たなくなってその場でうずくまる者も多数現れた。


「コー、みんなが座ってる。どうして?」


「チビが綺麗だから血圧でも上がって倒れたんだろ。それよかチビ…めっちゃチューしたいんだけど。駄目か?ちょっとだけ。ちょびっとだけ!」


「駄目。だってすごく綺麗にしてもらったんだから、絶対駄目。…もおっ、匂い嗅がないで!はぁはぁ言わないでっ」


「だってぶっちゃけめっちゃむらむらして爆発寸前なんだけど!どうしよう、俺頑張れ!ウェディングドレスを引き裂くのは夜まで我慢!」


「引き裂いちゃ駄目!コーの馬鹿、まっすぐ歩いて!」


神聖な気分になるはずなのに、相変わらずなコハクの頬を引っ張って笑ったラスは、皆に手を振りながら歓声に応えた。
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