魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
カイと共に入場してきたラスは…


カイの腕に抱っこされて、嬉しそうに笑っていた。


最初は驚きのあまり言葉のでなかったコハクだったが、みるみる表情は険悪なものとなり、踊るような足取りで近付いてくるカイに尖った声を浴びせた。


「なんなんだよこれは。俺の可愛い花嫁にべたべたすんじゃねえぞ!」


「私のプリンセスにおねだりされたんだ。怒るなら私ではなく、私のプリンセスに」


ぐっと押し黙ったコハクは、きゃあきゃあと声を上げて楽しそうにしているラスにほとほとあきれ果てて、腰に手をあてて待ち受ける。

参列者たちは一様に“微笑ましい”と瞳を細め、麗しき勇者カイとその一人娘で美姫として誉高いラスの姿に視線を奪われていた。


「ははっ、ラスらしいじゃないか。影、そんな表情してるとラスが可哀そうだ。作り笑いでもいいから笑え」


「うるせえぞ鼻たれ小僧が。…んなことわかってるっつーの」


真っ白なバージンロードを踊るように進んで来たカイは、コハクの前でラスを下ろしてベールであまり顔の見えないラスの頭を撫でた。

…これから、宣誓が始まる。


「私が君にできることはもう終わった。…私のプリンセスを頼んだぞ」


「…チビ、こっちに来い」


一瞬真顔に戻ったカイにつられるように表情を引き締めたコハクは、俯き加減のラスの可愛らしい唇に見惚れつつ、身体を斜めにしてラスの顔を覗き込むと、にやりと笑った。


「緊張してんだな?かーわいいなあ」


「コーは緊張してないの?私さっきから脚ががくがくして…」


小声で話していると神父から咳払いをされてようやく正面の祭壇を見つめた。

中央にはマリアのステンドグラスと、木製の十字架。

ようやく神聖な気分になったラスは、朗々とした神父の説教を聞きながら、金色の花で編んだブーケを握りしめていた。

コハクは時々そんなラスを盗み見ては可愛さのあまり撫で回したい衝動を抑えつつ、遅れてやって来たデスと抱っこされたベビーが最前列に座ったのを見届けて、ラスと同じように正面を見つめた。


デスが存在している以上、創造神は存在する。

この命も、創造神が助けてくれて、本当なら…死んでいるはずだった命だ。


ラスが…そして創造神が救ってくれた命。


「コー…緊張してるの?手を握っていてあげる」


「え?ああ…サンキュ。チビ…俺たち…結婚するんだな」


呟くと、ラスは一瞬きょとんとして、コハクの手をぎゅっと強く握った。
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