魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
ティアラの結婚式の時に、神父の宣誓は全部覚えていようと思っていたのに――

まるで全ての音から遮断されたかのように何も聞こえない空間で、隣のコハクを見上げたまま動けなくなった。

またコハクもラスを見下ろしてじっと見つめたまま動かず、はたから見ると美男美女が熱い眼差しで見つめ合っているように見えた。

途中から神父も呆れてしまって肩を竦めると、静かな声で最後の一文を口にした。


「死が2人を分かつまで」


「死?コー、私たちって死なないんでしょ?だったら死が2人を分かつことってないもんね」


「ま、一応宣誓ってことで頷いときゃいいの。チビ…結婚って契約なんだぜ。俺とチビはこれから契約するんだ。しかも死のない契約だから、俺とチビは一生契約で縛られる。…いいよな?後悔しねえよな?」


「後悔なんかしたことないもん。コー、もうちゅってしていいよ。神父様のお言葉聞き飽きちゃった」


「よし来た。じゃあいっちょ派手なのかましますか」


コハクとラスのひそひそ声が聞こえた神父は、もう笑うしかない状況に苦笑いしつつ、コハクとラスを向い合せに立たせて指で十字を切った。


「汝、病める時も、健やかなる時も、この者を愛し、支え、共に歩む事を誓いますか?」


「はいっ、誓います」


「以下同文」


応えたと同時にラスの腰を強く抱いて引き寄せたコハクは、顔を斜めにして待ちに待った熱いキスをラスに贈った。

…普通ならば軽いキスでいいのに、ここぞとばかりに舌を絡め、音まで聞こえそうな事態に皆が固唾を呑み、食い入るように見つめてしまう。

そうなること自体予想していた色ぼけ魔王は、ラスの身体がエビぞりになり、背中を手で支えながらさらに続行。

さすがにラスも恥ずかしさを覚えたのか、コハクの背中を何度も殴ったが大して効いた様子はなく、息ができなくなって顔が真っ赤になった時、コハクがようやく身体を起こした。


「満足満足。よっしチビ、次は外だ!今度は外でしようぜ。…野外プレイ!コーフンしてきた!」


「…相変わらず色ぼけね」


ティアラがぼそっと呟きながらも、ラスを抱っこして颯爽とバージンロードを歩いて外へと出た2人を見送り、リロイと笑い合った。


「あの2人はずっとあんな感じなんじゃないかな。ああ、僕らもずっと影にいじられ続けるのか…。嬉しいような、悲しいような…」


コハクは興味を抱いた対象しかいじらない。

長年の付き合いでそれを熟知しているリロイは、今日老いという概念から解放されるラスの未来が明るいものであることを神に祈り、指で十字を切った。

< 695 / 728 >

この作品をシェア

pagetop