魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
純白のウェディングドレスを泣く泣く脱いだラスは、お色直しの時に着ようと思っていた淡いピンク色のカクテルドレスをコハクに着せてもらった。

普段は髪を下ろしていることが多いので、緩く結い上げてもらってうなじが露わになると、むらっとした色ぼけ魔王がそこにキスをする。


「………俺も……したい…」


「はあ?寝言は寝て言え!チビはやっぱ淡い色が似合うなー。可愛いなー、ちょ、ちょっと触らし…」


「デス、ベビーのお守りをしてくれてありがとう。でももうちょっとお願いしてもいい?パーティーが終わるまで…」


ラスににじり寄ろうとしていたコハクの脇をすり抜けてソファに座っていたデスの頭をラスが撫でると、デスはこくんと頷いて、指をちゅうちゅう吸っているベビーを優しい瞳で見つめた。

ベビーが生まれたことでデスに何らかの変化が起きているのはとてもよい兆しなので、にこっと笑ったラスはようやく膨れっ面になっていたコハクの腰に抱き着いた。


「コー、行こ。ベビーは眠たいみたいだから部屋に居てもらおうよ。コー、抱っこして」


「はいはい、よいしょー。チビ、今日は人が沢山居るからぜーったい触られたりすんなよ。チビに触ってる奴見かけたら俺が八つ裂きにするからな。そうされたくなければ…」


「うん、わかった。コーのネクタイしてる姿すごく好き。式も終わったし少し緩めてあげるね」


部屋を出て廊下を歩きながらラスが首元を緩めてくれると、コハクは剥き出しになっているラスの細い肩にちゅっとキスをして、玉座の間に移動した。

前王が座っていたであろう玉座は空で、コハクは好んでそこに腰を下ろしたことはない。

だが赤い絨毯が敷き詰められた広い部屋が必要だったので、そこをパーティー会場に設定したのだが…扉を開けて中へ入ると、歓声が上がった。


「わあラス、そのドレスも素敵。この中じゃ捜すのも苦労しそうだから扉のすぐ横で待ち構えてたのよ」


「ティアラ!ティアラもその水色のマーメイドドレスすっごく素敵!それに人が沢山だね。こんなに沢山の人がお祝いしてくれてすっごく嬉しいっ」


はしゃぐラスに瞳を細めて笑ったコハクは、全くといっていいほど誰ともぶつからずにすいすい歩いて玉座の前に立つと、どっかり腰を下ろした。

コハクとラスに皆の視線が集まる。

音頭を期待されたコハクは、仕方なく口を開いた。
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