魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
「今日は俺たちの結婚式に参加してくれてありがとう。これからもグリーンリバーの繁栄と共に、今以上の楽園を築くことができるように努力する。あと、俺の花嫁に指1本でも触ったらぶっ殺すからな。以上!後は適当にやってくれ」


身も蓋もないコハクの挨拶に一瞬面々は呆気に取られたが、カイやリロイたちがくすくすと笑ったので、さざ波のように笑みが広がり、パーティーが幕を開けた。

華やかなパーティーは立食形式で、あちらこちらでダンスを踊っている姿を玉座から見ていたラスは、コハクの両頬を引っ張った。


「ねえコー、私も踊りたい。一緒に踊ろうよ」


「俺たちは主賓なの。ここでじっとしてないとみんなが俺たちを探して右往左往するだろ。後で部屋で踊ろうぜ」


「うん、わかった」


コハクの言うように、玉座にはコハクたちに祝辞を述べようとする者たちの行列ができていた。

とにかく2人を近くで見ていたいと思う者が多いらしく、ちらちらそわそわしながら半円状態で囲まれて、いくら見られることに慣れているラスでも少し気恥ずかしく感じてしまうほどの熱視線。

また自分の胸に熱視線を注いでいるコハクに気付いていたラスは、両腕を交差して胸を庇うと、ぺろっと舌を出した。


「コーの馬鹿、胸ばっかり見ないで」


「だってさあ…2年前はそんなんじゃなかったじゃんか。てか俺にとっては2年っていう歳月が流れた実感ねえし。ったく…こんなに美人になりやがって」


いつも少し口角が上がっているように見えるコハクの綺麗な唇をちらちら盗み見していたラスに求められていることに気付いたコハクは、にやりと笑いながら顔を近付ける。


「ぺろぺろしたい。いいか?いいよな?みんなに見てもらおうぜ」


「えっ?ちょ、コーっ、きゃーっ、くすぐったいっ!」


とうとう我慢できなくあった色ぼけ魔王がラスの頬や瞼をぺろぺろ舐めていると、周囲からはごくりと喉を鳴らす音が多発した。

ラスは本当に綺麗で可愛らしく、コハクは普段クールで笑うことが少ないが、ラスと一緒に居ると本当によく笑う。


愛娘がぺろぺろされている光景を目の当たりにしたカイは、テーブルからナイフを1本手にすると、コハクに向けてひゅっと投げた。

避けなければ正確にコハクの額に刺さるはずだったナイフは指と指の間に受け止められて、ようやく顔を上げたコハクにカイはにっこり笑いかけて限りなく小さな声で囁いた。


「殺すぞ」


ぞっとしたコハクは、続きは後で部屋でしようと固く誓ってラスを抱っこし直すと、部屋の中央に向かった。
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