魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
ラスもまたコハクが失敗した時のことは考えていなかったが、それでも永遠を一緒に生きようと思ってくれているコハクが万が一失敗して自分が死ぬようなことになったら…きっととても悲しむだろう。

そんなコハクの心の支えになってくれるのは、恐らくデスだろう。


「………だい、じょうぶ…。ラス……死なない…」


――死神の書にラスの名は載っていない。

本来はそれを本人に打ち明けてはならないのだが、今までこんなに強く“救いたい”と思ったことがなく、またあたたかい感情を芽生えさせてくれたラスに別れのような言葉は言ってほしくない。

死なないとわかっていても、言ってほしくない。


「そうなの?私…死なない?だったらコーをもっと安心させてあげなきゃ。このことは2人の秘密にしようね」


「………秘密……うん…。じゃあ……口止め料…」


「口止め料?どうしよう私お金持ってないけど…何がいい?」


ラスが困った顔をして見上げてきた時――


デスはラスを強く抱きしめて、かなり強引にラスの唇を奪った。

ラスが驚いている間にも舌を絡めて強く吸い上げると、ラスの身体が大きく揺れて腰がへたりそうになり、唇を重ねたままそんなラスを抱っこしたデスは、また身体が何かおかしくなりそうになりながらも夢中になって舌を絡めて音を鳴らした。


「ん……っ、んん、ん…っ、で、す…!」


「………魔王の……真似…」


「真似でも、駄目…っ!コーに、怒られちゃう…っ」


「………うん…もう…やめる…」


口から下にはキスをしてはいけないと言われていたので、これがコハクに知られてしまっては半殺し以上の目に遭うだろうが…唇を離すと、ラスは少し頬を赤らめながらデスの両頬を手で挟んで怒った。


「めっ。これが口止め料なの?もうしちゃ駄目だからね、私前にリロイとキスしたことがあって、コーにすっごく怒られたんだから」


「………えへ」


はにかんだデスがラスを下ろすと、バスルームから濡れた髪をかき上げながらコハクが出て来た。

間一髪だったので思わずラスが固まってしまうと、デスはラスの頭をよしよしと撫でて、コハクにエールを送った。


「……魔王…頑張れ…」


「おうよ、言われなくても頑張るし。子守りサンキュな」


肩にバスタオルを引っかけたコハクから頭をぐりぐりされてまたはにかんだデスが部屋を出て行く。

ラスはすぐコハクに駆け寄ると、腰に抱き着いて喉をごろごろ鳴らした。


これから、始まるのだ。
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