魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
ラスがあまりにも純粋にコハクを慕うので、アンドリューやウサギたちは絶対にラスをあの真っ黒な男とまた会わせてやろうと決意していた。


どんどん火山が近付いてきて灰が降り注ぎ、直に太陽の光もさえぎられてゆく。

だが気温はぐんぐん高くなり、アンドリューは羊皮紙に描かれた地図に目を落とし、呟いた。


「この先に沼があるんだけど毒沼だから渡れないんだ。どうしようかな…」


「船を造ったら?」


「人手が足りないよ。でもこの先に村があるんだ。そこに協力を求めれば…でも…」


なお言いよどむアンドリューの傍に寄って一緒に地図を覗き込んでいると、ラスに抱っこされていたウサギがずばっと切り込んだ。


「ドラゴンライダーの村だろ?あいつら気性が荒いし…それに…」


「ドラゴン!」


――そのドラゴンライダーの村はアンドリューたちによっては不安要素だったのだが、“ドラゴン”と聞いたラスは逆に瞳を輝かせた。


「私のお城にね、本が沢山あるの。ドラゴンも沢山本に出て来たけど、本当に存在するの?ここってすごい!」


フードを被った首元から金の髪が零れ出し、満面の笑みでアンドリューのマントをくいくいと引っ張ると、地図上の村を指した。


「行こ?ここは親切な人が多いから絶対協力してくれるよ。駄目なら他の方法を捜そ?」


あくまでも前向きなラスの発言にウサギたちは顔を見合わせて小さく息をつくと頷いた。


「わかったよ、じゃあ行こう」


「うん!」


途中、機嫌の良いラスが歌を唄い出した。

透き通った透明でいて高い歌声にアンドリューたちが聴き惚れ、ラスと愉快な仲間たちはあちこちで凶悪に光る瞳たちを怖がることなくやり過ごして突き進む。


…そう、ここは己の想像にとらわれてはいけない世界。


ウサギが不安な気持ちを抱いたとしてもラスが明るい気持ちで居れば、それを打ち消すことができる。


ラスに不安なものなど一切ない。

雷は少しは怖いけれど、コハクに会えるのならばどんな困難でも乗り越えてゆこうという強い意志がある。


「着くよ」


生い茂った草をかき分けて進んでいくと、方錐形の藁で作られた家が見えてきた。ドラゴンライダーの村だ。
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