魔王と王女の物語②-Chain of destiny-【完】
ドラゴンが心配そうに小さな声でくるくると鳴き、ラスは決意を固めた強い表情で四精霊を見回した。


「それで…コーに触れないっていうのはどういうことなの?」


「この世界ではコハクは触れるし生きてるのと同じだけど、人間界に戻ればコハクは希薄な存在で、妖精や私たちと同じ。だけどおチビさんにだけはコハクの姿を見ることができるわ。だからあなたはゴールドストーン王国へ戻り、あの魔法剣でコハクを刺せばいいの。たったそれだけの試練よ」


「そっか…。それだけなら……でも私がコーを刺さなきゃいけないんだよね…?」


「チビならできるって。チビは俺のこと愛してるだろ?」


――コハクを含め、ドラゴンを除いた皆がわくわくしながら答えを待っていると、ラスは恥ずかしげもなくこくんと頷いてコハクの腕に絡み付くとぴったりと身を寄せた。


「うん、愛してるよ」


「ち、チビっ!」


「こらこらそこ、爆発しない!だったら大丈夫よ。魔法剣に吸い取られたコハクの魂はコハクの身体に還り、完全体に戻れるわ。後はもう結婚するなり好きにしたらいいんじゃない?」


そうと決まれば思い立ったら即行動の面々は腰を上げ、ラスとコハクの前にあの扉を呼び出した。


「これを潜れば人間界に戻れるわ。やっぱりすぐにゴールドストーン王国に行くわよね?」


シルフィードが当たり前のようにそう問うと…ラスは首を振り、コハクを見上げた。


「リロイたちのことが心配なの。コー、みんなと合流してから王国に戻ってもいい?」


「ああいいぜ、チビの好きなようにしろよ。だけどしばらくチビに触れなくなるのはつまんねえな」


「私だってそうだよ。でも私にはコーが見えるし、みんなにもコーが生きてることを伝えることができるからいいの。四精霊のみんな、ドラゴンさん、ウサギさんたちお世話になりました。アンドリューはどうするの?」


「俺も人間界に帰るよ。オレ…小さな国の王子なんだ。ラスがゴールドストーン王国の王女だって聴いてまだびっくりしてるよ」


「そうなの?じゃあまた会うことができるよね!じゃあみんな…また会ってください!」


「気を付けて」


コハクが四精霊から貰った4つの石を体内に取り込み、扉を開けた。
< 93 / 728 >

この作品をシェア

pagetop