約束の大空 1 【第1幕、2幕完結】 ※ 約束の大空・2に続く


えっ?

思わず滑り出した言葉に両手で口元を塞ぐ。


斎藤さんは、ただ何も言わずに私を見つけて
そのまま一言も発することなく何処かへ消えて行った。



この世界は?



どうして?

どうして、そんな言い方するの?


ここは私が居る世界。

私がずっと晋兄や、義兄たちと過ごした
私の世界のはずでしょ。


人が人の命をやりとりするのなんて、
珍しいことじゃない。


悲しいけど……、
それが当たり前の世界だったはずでしょ。


だから……
もうすぐ義兄も天国に行っちゃう。



それが私が辿った歴史。



なのに……どうして?


どうして……今、
この心は悲鳴をあげそうなほど痛いの?



頭の中の靄が少しずつ
晴れていくような錯覚と共に訪れるのは、
割れそうなほどの頭痛。


思わず両手で頭を抱えて、
腰をかがめるようにして、
壁伝いに移動すると誰も居ない場所で座り込んだ。




……どうして……?




ふと脳裏に浮かんでくるのは、
真っ青な青空。



そして……灰色の大きな建物が立ち並ぶ光景。



その中で……笑いあう三人。


花桜……、瑠花……。




何?
私……知ってる……。




花桜のことも……瑠花のことも……。




花桜は……小さい時からずっと一緒に剣道をしてきた仲間。
瑠花は花桜の友達で、いつしか私も友達になれた。


学校は違うのにすぐに二人は、
私を受け入れてくれて学校帰りや休日に一緒にお茶をしたり、
買い物行ったり……沢山の時間を過ごしてきた親友。



……そうだ……。



全国大会の帰り道……突然の雨に降られて、
私たちはこの世界に飛ばされた。


そして……私は記憶を失い、
晋兄や、義兄に助けられたんだ……。



靄が晴れていくのと共に、
痛みがすぅーっと引いていく。



そしてそれは、息苦しかった呼吸も
ゆっくりと穏やかにしていった。


壁に背中を預けて、肩で息を整えながら
ふと空を見つめる。




……花桜……。





呼吸も痛みも落ち着いた頃、
ゆっくりと、立ち上がる。




改めての覗く屯所内は、
何処か色が鮮やかに見えた。



隊士たちは、
今も忙しなく動き続けてる。



誰が殺したかなんて、
目撃してたわけじゃないからわからない。
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